環境問題に対して小学生ができることを解説。身近な例を知って親子で取り組んでみよう!

環境問題に対して小学生ができることを解説。身近な例を知って親子で取り組んでみよう!

地球温暖化をはじめ、地球の環境はかつてないスピードで変化しています。残念ながら、近年は特に環境問題が深刻化し、パリ協定を定めるなど脱炭素社会へ向け世界が対策に動いています。また、SDGsの普及に伴い、学校教育においても環境に関する取り組みが積極的に行われています。持続的な社会の構築に向け、環境教育を通して子どもたち一人ひとりが身近な環境と関わりを持ち、環境に対して豊かな感受性を育むことが求められているのです。

 

一方で、環境教育に力を入れたいけれど、子どもと一緒にできる具体的なやり方が分からないとお悩みの親御さんもいらっしゃるのではないでしょうか。そこで今回は、環境問題に対して小学生でもできる取り組みをご紹介します。

さまざまな地球の環境問題

環境問題とは、私たちの生活に起因する環境の変化によって発生する問題の総称です。産業革命以降、化石燃料の広範な使用やプラスチックの普及により、私たちの生活は格段に快適になりました。その反面、二酸化炭素(CO2)の排出や、石油由来のプラスチックの大量生産によって、地球の環境に深刻な変化が生じています。

 

地球温暖化、大気汚染、土壌汚染、水質汚染、ごみ問題、エネルギー問題...。世界中でさまざまな環境問題が巻き起こる中、日々の生活の中で環境問題を身近に感じる機会は少ないですよね。しかし、これらの問題は現実に起きており、その影響は今後、人間や他の生き物が将来的には地球に住めなくなるほどの問題に深刻化する可能性があります。

地球環境の今

地球環境を知るための大きな指標の一つが地球の生物多様性の劣化を示す「「LPI:Living Planet Index(生きている地球指数)」です。この指標によると、1970年〜2018年の間に地球の自然の豊かさが平均69%減少しているとされており、こうした環境悪化の大きな原因となっているのが、人類による「地球の使いすぎ」です。現在の人類による消費の大きさを計算すると、地球1個分の生産量に対して、1.75個分利用しているとされています。つまり、0.75個分使い過ぎているということです。

 

この現在オーバーしている地球0.75個分の消費分は、いわば森や海などでの乱獲や、大量の二酸化炭素を排出することで、未来から「先借り」してしまっているわけです。これは、地球が本来もっている生産力を超え、原資を食いつぶす形で、人類が消費を拡大し続けているということに他なりません。

身近な環境問題について考えてみよう!

環境問題が注目される中で、「自分ごととして感じない」という人もいます。しかし、このまま環境問題が進行すれば、私たちの家庭や日常生活にもっと大きな影響を及ぼす可能性があることを理解する必要があります。具体的な取り組みをご紹介する前に、環境問題の中でも「身近な問題」に焦点を当て、その原因と特徴について詳しく説明していきましょう。

地球温暖化

 

地球全体の平均気温が上がることを「地球温暖化」といいます。このままのペースで二酸化炭素が増え続けると、気温が上がることで空気の大きな流れが変わってしまい、日本でも台風や洪水などの気象災害やこれまでにない大雨や厳しい暑さといった異常気象が増えていきます。また、海面が上がって島や標高の低い海辺の地域が沈んだり、干ばつが起きて農作物が取れなくなったり、世界中の自然や暮らしにたくさんの影響が出るともいわれています。


海洋汚染

 

海洋汚染とは、人為的な要因によって引き起こされる海の汚染のこと。その主な原因は工業排水、生活排水、船舶事故による油の流出、そしてペットボトルやビニール袋などのプラスチックごみなどの不法投棄です。ただ海が汚れるだけでなく、海洋生物の生態系が崩れてしまったり、有害物質の影響を受けた海産物を食すことで人体に直接影響が出たりと、さまざまな問題があります。


ごみ問題

 

ごみ問題とは、日常生活や経済活動、災害などに伴い発生したごみや廃棄物に関する問題のこと。過剰包装や使い捨て商品の増加に伴い、年々深刻化している問題です。焼却炉でごみを燃やした際に発生する二酸化炭素によって地球温暖化を進行させる他、不法投棄などによる環境汚染や健康被害も懸念されています。適切な処理をする場合でも、ごみの発生に焼却や最終処分場での埋め立てが追い付かず、2040年には、ごみを埋め立てるための最終処分場が満杯になり、ごみを埋め立てできなくなるとされています。


オゾン層の破壊

オゾン層の破壊

 

冷蔵庫やエアコンなど、私たちの日常生活に欠かせない家電製品の多くは、温室効果ガスである「フロン」を排出します。フロンは効率的な冷却に使われる化学物質ですが、地球温暖化を進行させる特性を持つことから、環境への影響が懸念されています。さらに、フロンは大気中の紫外線と相互作用し、オゾン層を破壊する問題も引き起こしています。オゾン層は、太陽からの有害な紫外線を吸収し、地球の表面や生態系を紫外線から保護する役割があるため、フロンによるオゾン層の破壊は、人間や生物への健康被害に直結する可能性があります。


環境問題に対して小学生ができること6選

「環境活動や取り組みに関する知識がない」「毎日の生活が忙しく時間と気持ちに余裕がない」と仕事や家事に忙しい中、わが子に環境問題について丁寧に教えて行動するのは大変ですよね。そこで、忙しかったり、具体的な方法が分からないという方にもおすすめな取り組みをご紹介します。どれも小さな工夫やちょっとした意識で始められることですので、ぜひ参考にしてみてください。


①環境問題について家族と一緒に考えてみよう!

自分たちの暮らしに直結する問題として、お子さんが小さなうちから環境問題について話しあうことで、家庭内で環境保全に対する意識づけができます。その際は、「相手を否定しない」「変化を強要しない」「楽しさを伝える」ことを意識して話してみましょう。また、最近では環境学習支援施設や、クリーンセンターといった環境問題を楽しく学べる施設もオープンしています。親子で足を運んでみて環境問題について考えるきっかけにしてみてはいかがでしょうか。


②家のごみ箱の中身を見てみよう!

出てしまったごみはしっかり分別し、リサイクルを心がけることはもちろん大切ですが、できるだけごみを出さないような暮らしを目指してみましょう。ごみを減らそう!と決めたらまず、家のごみ箱の中身を確認して毎日何を捨てているのかを知ることが大切です。そのうえで、「使い捨て・過剰包装のものは買わない」「捨てずに売ってみる」「包装紙や紙袋などを雑紙として利用する」など、3R(リデュース / リユース / リサイクル)を意識して日々生活してみましょう。インスタグラムで #zerowasteと検索すれば、世界中からたくさんの投稿があるので、暮らしの中でごみを減らすヒントが見つかるかもしれません。


③マイボトル、マイカトラリーを持ち歩こう!

使い捨てのカップ、スプーン、フォークなどを、自分専用のボトルや箸に置き換えるだけで、プラスチックごみの削減が期待できます。マイボトルは保温や保冷の機能を備えているため、外気温の影響を気にせず飲みたい温度で飲み物を楽しむことができますし、特に夏の季節では、冷たいペットボトルからの水滴が衣服やバッグにつく心配もなく、快適に利用できます。朝の忙しい時間帯に水筒を用意する余裕がない方や、すぐに中身を飲み干してしまい、結局ペットボトルを購入してしまう方には、公共の給水スポットを利用することもおすすめ。プラスチックごみを削減&お金を節約しながら水分補給ができます。都内にも年々、給水スポットが増えているので探してみてはいかがでしょうか。


④エアコンの設定温度と風向きを調節して節電しよう!

夏の暑い時期や冬の寒い時期に欠かせないのがエアコン。節約を意識せずに使っていると電気代が高額になるのと同時に、エネルギーの使用量も増え、二酸化炭素の発生を促すことで地球温暖化を加速させる一因となります。夏の冷房時の室温は28°C、冬の暖房時の室温は20°Cを目安にし、室内温度は適温に保ちましょう。また、扇風機やサーキュレーターを併用すれば、夏は風が体にあたると涼しく感じ、逆に冬は暖まった空気を循環させることができます。無理に我慢せず、適温を保ちながらできる工夫をして節電を心がけましょう。


⑤家庭菜園を始めてみよう!

自分が口にするものを自分の手で育てることは、食育はもちろん、エコ意識を育むことにもつながり、自然や環境に関心を持つきっかけになります。先進国のなかでも特に食料自給率が低い日本では、多くの食料を海外からの輸入に頼っており、食料の輸送にかかる地球への負荷は高くなります。自宅で採れた野菜を自宅で消費すれば、輸送によって発生する二酸化炭素の排出をゼロにできますし、生ごみを堆肥化(コンポスト化)して家庭菜園で使用すると、ごみの減量化にもつながります。新型コロナウィルスによる外出自粛によって世界的なブームとなっている家庭菜園。ベランダなどの小さなスペースでもできるところから、一度始めてみてはいかがですか?


⑥ごみ拾いイベントに参加してみよう!

市や自治体、環境保全団体などが主催するごみ拾いに参加してみましょう。注意深く探してみると、普段気にせずに歩いている街中でも、意外と多くのごみが落ちていることに驚くはずです。こうした陸地に落ちているごみが、雨や風で海洋に流れ込み、海洋汚染の大きな原因となっているのです。最近ではごみ拾いにスポーツのエッセンスを加えた、競技性のある面白いごみ拾いイベントも開催されています。親子で環境問題を意識するきっかけにするとともに、楽しみながらできる休日のアクティビティとしてぜひ取り入れてみてください。


環境問題への小学校の取り組み事例

 

SDGsの普及により、その実現に向けて教育機関にもESD(持続可能な開発のための教育)を通した教育活動が求められています。ESDとは、持続可能な社会づくりの担い手をはぐくむ教育のこと。地球規模の課題を主体的に捉え、どうすれば解決できるのかを考える力を育む教育の重要性が増しているのです。ここでは、小学校の環境問題に対する取り組み事例をご紹介します。

東京都江東区立八名川小学校の事例

2010年以来、ESDを中心として教育を進めており、第1回SDGsアワード特別賞を受賞。SDGsを1年を通じて学ぶ科目横断型の「カリキュラム・マネジメント」を実施。総合的学習の時間を基軸として、社会科や特別活動、図工などを組み合わせて未来に対する自分なりの目標設定を行っています。また、1月から2月に実施される「八名川まつり」に児童たちが参加し、そこでプレゼンテーションを実施。地域の人々の前で発表することで、自分たちがやってきた学びをアウトプットできるのが特徴的です。

東京都小笠原村立小笠原小学校

世界自然遺産に登録されている小笠原の自然について、環境教育の観点から各学年で取り組みを実施。5年生では、アオウミガメの生態について探究活動を行い、主体的・創造的に取り組む姿勢と、郷土小笠原への誇りや愛着を育むことを目的とした学習を展開しています。海洋センターのアオウミガメ保護・調査活動である「産卵調査」「卵の移植」「飼育」「放流」などを体験的に学ぶ総合的な学習を行い、その成果をビジターセンターに張り出すことで、島民や観光客に向けて発表しています。

福岡県大牟田市吉野小学校

学校内でユネスコスクール※担当者を選任し、ESD部会を創設。学校全体として「地域への活性化を働きかける」をテーマに組織的にESDの実践を展開しています。地域の方との桜の植樹やビオトープの清掃など、地域との協働的な活動を実施。持続可能なまちづくりに向け、自分たちができることを考え、行動できるような能力や態度、郷土を愛する心情の育成を目指しています。


※ユネスコ憲章に示されたユネスコの理念や目的を学校のあらゆる面(組織運営や授業、プロジェクト、経営方針等)に位置づけ、「児童生徒の心の中に平和のとりでを築く」ことを目指す、ユネスコが認定する学校の国際ネットワーク

身近なことから行動を起こしてみよう!

学校教育のなかでも、地球規模の課題に対して主体的に捉え、解決への道を考える力が求められていますが、なにか特別なことをする必要はありません。身近な暮らしを少しづつ変えていくことは、子どもにとっても理解しやすいエコな活動になるはずです。ひとつひとつは小さなことでも、それらの取り組みが大きな成果へとつながります。全てをいっぺんにやろうとせず、自分の生活や家族に無理のない範囲で続けていけるものから取り入れてみましょう!




(参考1)WWFジャパン「環境問題とは?地球の未来のために、知るべきこと」

(参考2)環境省「家庭でできる節電アクション」

(参考3)農林水産省「世界の食料自給率」

(参考4)文部科学省「持続可能な開発のための教育」

環境問題に対して小学生ができることを解説。身近な例を知って親子で取り組んでみよう!

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