ブルーカーボンへの挑戦――藻場再生の現場
藻場再生プロジェクト|出典:ニチモウ株式会社
ニチモウさんが特に力を入れているのが、岩手県釜石を中心とした「藻場(もば)再生プロジェクト」です。海藻の森を増やして、海を豊かにする活動です!
なぜ海藻の森が消えてしまうの?
写真:磯焼けした海底|出典:ニチモウ株式会社
その原因のひとつがウニ。海水温の上昇でウニが休眠しなくなった結果、冬から春にかけて芽吹くはずの海藻の赤ちゃんを食べ尽くしてしまうんです。大きくなった海藻はすぐにはウニに食べつくされにくいのに、芽吹いた直後は負けてしまう。そのタイミングの問題で、大きく育つ海藻がいなくなり、海底が丸裸になってしまう「磯焼け」という現象が起きます。
さらに、エサを失ったウニはお腹がペコペコで中身もスカスカに…。そんなウニを漁師さんも採らなくなってしまいます。海の生き物も人も、みんなアンハッピーな状態になっていました。
コンブの"囮作戦"!
バイオ・生分解性土のう袋で養殖したコンブ|出典:ニチモウ株式会社
釜石東部漁協さんとニチモウさんの作戦はユニークです!天然の海藻を食べ尽くしてしまうウニは、実はコンブが大好き。実践した方法は、バイオ・生分解性土のう袋に括り付けたロープにコンブの種苗(赤ちゃん)を植え付けて育て、育ったものを磯焼けした海底に沈める、というものです。
アカモク藻場|出典:ニチモウ株式会社
実際にこの方法で、テトラポットがむき出しだった海底に海藻の森が戻ってきた実績があります。しかも、この生分解性バッグごと海底に落としてしまうので、「いつまでも海底に残ってごみになりにくい」という観点からも生分解性資材との相性が抜群なんです。
さらに嬉しいことに、生分解性のロープは従来品と比べて種苗の初期成長が早いことも確認されています。毎年1年目と同じように資材を入れ替えることで、3年継続しても安定した成果が出ており、日本全国においてもトップクラスの藻場再生事業だといいます。
漁師さんにもうれしいメリットが!
アカモク藻場|出典:ニチモウ株式会社
藻場が再生されると、エサを失って「スカスカ」だったウニがコンブを食べて「パンパン」に身が詰まるように!漁師さんが高値で売れるウニが育つので、環境保全と漁業振興が同時に実現できるんです。
「パンパン」のウニが採れるようになることがわかったので、漁師さんにも前向きに参加してもらえているといいます。みんながハッピーになれる取り組み、素晴らしいですよね。
現場のリアル
藻場再生の現場で、コンブを移送する実際の現地の様子|出典:ニチモウ株式会社
「現場で汗を流して頑張ってくれている方の想いを開発品にメッセージとして刻む。開発した人の想いを100%クリアに伝えないといけない。そうでなければ商品が可哀想」——ニチモウさんの担当者はそう語ります。
自ら使用済み漁網の切り分け作業をし、藻場再生の現場では小さな船の上で大きく育った海藻と格闘してきました。周りには船酔いでダウンしてしまう人もいるほど過酷な環境。揺れる足場で、ぬるぬると滑るコンブを扱う作業は、「本当に大変でした……」と振り返ります。
そんな「現場のリアル」を身をもって知っているからこそ、彼らの生み出す技術やリサイクルへの想いには、誰にも真似できない説得力が宿っているのです!
これからの漁業はどう変わる?ニチモウのビジョン
日本の水産業は今、あらゆる方面から課題を抱えています。魚が獲れなくなってきた問題、漁師の高齢化と後継者不足、そして消費者の魚離れ。お魚は調理が面倒、骨が面倒、生ごみのにおいが気になる、お肉に比べてお腹が空きやすいのに値段は高い……日本人の魚介類の消費量は年々減り続けています。
そんな状況の中で、ニチモウさんの担当者2人がそれぞれの言葉で語ってくれました。
機械・資材事業本部 化成品営業部 第三チーム担当チームリーダー 小泉さん
「誰かがやってくれる」では、環境問題は変わらない。やらなきゃ!と思ったらやるべきなんです。
娘を持つ親として、「命を授かって生まれた以上、何か残していかなればならない」という信念のもと、自分より若い世代のために何ができるか日々問い続けています。
環境活動や環境配慮資材によって収益化が実現できているのか?と問われると、現時点では十分に達成できているとは言えません。しかし、儲からないからといって取り組みをやめてしまえば、地球環境は悪化の一途をたどります。
本来、地球をより良くするための行動に理由は必要ないと考えています。たとえきれいごとだと言われたとしてもそれを貫くことこそが大切だと思っています。
毎年「海の自由研究フェス」というイベントでワークショップを開き、紙芝居で海ごみ問題を伝えながら、バイオ・生分解性資材を使ったバッグづくりを体験してもらっています。1年目に作ったバッグを翌年も大切に持ってきてくれるファンの子どももいて、「みんなが大きくなる頃には、こういう素材が世の中に溢れているといいね」——そのメッセージを子どもたちに毎年届け続けることが、将来の普及への大切な種まきになっていると思っています。
海洋事業本部 海洋営業部 環境開発チーム 日昔さん
漁業がずっと元気で居続けられることのために、なんでもやっていきたいです。
「魚を獲ることから食べることまで」すべてに関われる会社だからこそ、地元目線でそのきっかけを逃さずに取り組んでいきたいという思いを持っています。
そして、何よりも一人の消費者として、美味しいお魚が食べたい。北海道に行ったら美味しいホタテやサケが食べたいし、東京にいてもいろんな地方の魚が食べられたら幸せ。だから、10年後、20年後に本当にそれが実現しているように力を尽くしたい。それがモチベーションになっています。
水産に関わる仕事をしている私でも、スーパーでは外国産の安いお魚についつい手が伸びてしまうことがあります。環境にいいという理由で商品を選ぶのは、心とお財布に余裕があるときでなければ難しいです。だからこそ、消費者が環境に配慮したものを手に取りやすくなるような仕事をしていきたいです。
そして消費者の皆さんにも、「少しでも心に余裕がある日は、ちょっと高くても選んでほしい。その小さな積み重ねが、みんなで素敵な海を守っていくことにつながる」というメッセージを届けたいです。
まとめ
ニチモウさんが取り組む「バイオ・生分解性漁業用資材の開発」「使用済み漁網のリサイクル」「藻場再生プロジェクト」。これらはバラバラな活動ではなく、海の環境を守りながら漁業を持続させるという一本の軸でしっかりつながっています。
1910年創業から積み上げてきた漁業への深い理解と、「漁師さんの立場に立った話ができる」という現場目線が、ニチモウさんの一番の強み。環境に良い素材でも、コストが高く普及が難しいという現実はある。それでも「海ごみ問題に正面から向き合う会社でありたい」という熱い思いが、地道な取り組みを支えているんです。
私たち消費者にできることは小さいかもしれません。でも、心に余裕がある日に、少し高くても環境に配慮した選択をすること、その小さな積み重ねが、豊かな海を未来へつなぐ力になるんじゃないかな、と思います。
環境への取り組みって、遠い未来の話じゃなくて、自分たちの食卓を守ることとつながっているんだな、とじんわり感じました。みんなで素敵な海を守っていけるといいですよね。















