気候変動や地球温暖化など、環境問題が年々深刻化していることもあり、世界中でCO2排出量削減に向けた取り組みが行われています。
この記事を読まれている方は
「国の発展水準別で見る環境問題について知りたい。」
「発展途上国が抱える環境問題について知りたい。」
「環境問題における先進国について知りたい。」
「環境問題における日本のレベルについて知りたい。」
このようなことに興味がある方なのではないでしょうか?
記事を最後まで読んでいただければ、上記の内容についてより理解が深まると思いますので、ぜひ最後までお付き合いください。
それでは解説していきます!
国の発展水準別で見る環境問題
ここでは環境問題に関しての一つの目安として温室効果ガス排出量をベースに先進国・発展途上国(新興国)を分けて解説していきます。
先進国
現代において、地球温暖化問題を巡り、先進国に対し、途上国が不公平感を強く抱いてきました。その理由は、途上国の中には、地球温暖化に最も影響が大きいと言われている温室効果ガス排出量が少ないにも関わらず、温暖化の影響を深刻に受けてしまう国が多いからです。
世界中の国々を、20数カ国におよぶ先進国グループと、147カ国を超える国々が含まれている途上国グループに分け、温室効果ガスの累積排出量を比較した場合、1990年にはそれぞれ先進国が39%、途上国が41%で、ほとんど差はありませんでした。つまり、一か国で見た際には、先進国が排出する温室効果ガスの量が圧倒的に上回っているということです。先進国は新興国・途上国に比べて科学技術や経済が発展しているため、環境問題解決への施策に今後より注力して取り組まなければならないでしょう。
発展途上国(新興国)
発展途上国とは、先進国と比べて経済や近代産業の水準が低く、発展途上段階にある国々の総称です。先進国と発展途上国を明確に区別する線引きはありませんが、一般的にODA(政府開発援助)を受け取っている国を発展途上国と呼ぶことがほとんどです。また、発展途上国の中でも経済が急速に発展しているものの、先進国と比べるとまだ一人当たりの所得や生活水準が低い国々は新興国と呼ばれています。環境問題解決に貢献しようと二酸化炭素排出量の削減を含む、様々な施策に取り組む先進国に対し、現在も各分野で急速な発展が遂げられている新興国では二酸化炭素排出量は増加傾向にあります。
2015年から採択されていた、地球温暖化への対策である国際的な枠組みとされる「パリ協定」の運用が、2020年1月に開始されており、長期目標でパリ協定が掲げていることは、世界における気温上昇の平均を、産業革命より前と比較し2℃未満に保ち、1.5℃未満となるよう努力することです。つまり地球温暖化への対策として二酸化炭素の排出量を削減することが各国の急務と言えます。
先進国と新興国のグループで構成されるG20(ジートゥウェンティー)での二酸化炭素排出量についてエネルギーが原因のものに限定した排出量推移を表した下記の図が経済産業省から公開されていますが、この図からも、新興国の場合は二酸化炭素排出量が増加している傾向であり、先進国の場合は減少傾向であることが分かります。
参考文献:IEA「CO2 EMISSIONS FROM FUEL COMBUSTION」2019 EDITIONをもとに経済産業省作成
発展途上国が抱える環境問題
先進国に比べて発展途上国が抱える環境問題にはどのようなものがあるのでしょうか?ここでは3か国について解説します。
インドネシア
インドネシアは、オートバイや自動車が排出するガスにより、大気汚染問題が深刻化しています。特に、ジャカルタのような都市部においては、オートバイや自動車が渋滞により、同じ場所で長時間排気ガスを排出するので、沿道において大気汚染が深刻な問題となっている状況です。
2021年9月では、ジャカルタ特別州知事のアニス・バスウェダン氏やジョコ・ウィドド大統領に対し、中央ジャカルタ地方裁判所が「市民が清潔な空気を吸える権利が守れていない」という判決を下し、大気汚染を改善する対策に注目が集まっています。
その他にも、乾季に実施する焼畑が要因となり生じる森林火災や工場で排出される排気ガスなども大気汚染原因として注目されています。特に、焼畑が要因の大気汚染では、規模が非常に大きく、煙霧が隣国のマレーシアやシンガポールにまで及んでおり、目の炎症といった健康被害も深刻な問題です。
フィリピン
フィリピンは、有害物質であるダイオキシンなどが生じるといった理由から、ゴミを焼却し処分することが禁止されている国です。ごみ焼却炉を作成する場合、厳格な基準を満たした大規模な焼却施設でなければなりません。このような背景もあり、フィリピン・セブにおいては、大きいごみの集積場をイワナヤン地区に作り、セブ中のごみを収集している状態です。すでに集積場の許容量以上となっており、空き地に何とかごみが積まれている状態となっています。
フィリピンでは、ごみの山から販売できるものを見つけ、生活を送るスカベンジャーという人もおり、ごみ山では有害物質が生ごみと日光により生じることで、健康被害についても問題となっています。
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アフリカ
アフリカ大陸に存在する国すべてで環境問題が顕著に発生しているわけではありませんが、南にある地域では、深刻な環境問題を抱えています。特に深刻な問題は、砂漠化です。砂漠化は、半乾燥地域や乾燥地域において、人間の活動や気候変動といった多種多様な原因による、土地の劣化を意味します。この砂漠化は、「人為的要因」と「気候的要因」の2つにより発生しています。
人為的要因
砂漠化の人為的要因は家畜の過放牧や違法な森林伐採、農地拡大などです。砂漠化に繋がるこのような活動は、人口増加や貧困増加により、大きく影響されます。
2019年において、10億6,000人の人口がサハラ以南に存在するとされていますが、2050年になる頃には、人口は21億人を超えると予測されており、人為的な要因が今後さらに大きくなる可能性が高いです。例えば、多くのアフリカ人が農業で収入を獲得していますが、今後人口が増えることにより、農地を拡大するのは不可欠でしょう。また、調理時には、炭や薪などを燃料とするので、さらに砂漠化を深刻化させる可能性が高いです。
気候的要因
サハラ以南の地域では、雨がほとんど降らず、年間降水量が極めて少ない地域も存在し、年間を通して150mmしか雨が降らない国もあります。
日本の場合、年間で1600mm前後の降水量がありますので、比較した際にアフリカの降水量が圧倒的に少ないことが分かるでしょう。雨が降らないことで、乾燥はさらに深刻化し、植物も育ちません。このように、アフリカでは環境面でも食糧面でも大きな課題を抱えています。
環境問題先進国って?
先進国や発展途上国という呼び方は、主に経済分野で用いられることが多い呼び方ですが、環境問題という分野の中では環境対策の取り組みが特に進んでいる国が「環境問題先進国」と呼ばれています。環境問題における先進国には、ヨーロッパの国々が名をつらねています。ここでは、ドイツとスウェーデンを例に挙げ環境問題先進国と言われる所以について解説します。
ドイツ
ドイツは、世界的に環境先進国として認知されている国です。
ドイツが制定する基本法の中で、「次世代のために自然を守る責任がある」と定められているほど、ドイツは国として環境意識が非常に高いことが分かります。環境に対し高い意識を持つようになったのは、大気汚染が原因となり1970年に発生した酸性雨によって、森林が消失したことからです。それに加え、ライン川の汚染などもあり、自然環境が破壊されていることを目の当たりにしたことで、ドイツは国規模で環境保護に向け、取り組みを開始しました。1970年代後半~80年代、1990年代初頭で、環境問題改善に積極的に取り組むようになり、前述したような、基本法の中に「自然への責任」を記すなど、「環境先進国」として世界に知られるようになりました。
ドイツでは、次世代を生きる子供たちに向け、徹底した環境教育が実施されています。ドイツの各地では、「森の学校」と言われる、地域の環境教育や自然保護を実施するエコセンターにおいて、幼い子供に向けたプログラムが行われるなど、環境を学べる場が構築されています。また、大気汚染問題について懸念される前の1960年代から、「屋上緑化」に注力しており、ガイドラインが1975年に誕生し、年間1000万㎡も増加し続けている状況です。
その他の取り組みとして、ドイツではペットボトルや缶に入った飲料を購入する際に、デポジット料金を加算するよう義務付けられています。飲み終わった空のペットボトルは回収機に投入すれば、加算された分のデポジットがクーポンといった形で購入者に返却されます。これによりリサイクル率が向上できることに加え、ごみのポイ捨てを削減できる仕組みとなっています。
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スウェーデン
スウェーデンも、SDGsに積極的に取り組む環境先進国として、世界から認知されており、2017~2023年でのSDGs世界ランキングからも、常にトップ3の中に入っている国です。SDGs世界ランクにおけるスウェーデンは、以下のような成績を収め続けています。
2017年:第1位
2018年:第1位
2019年:第2位
2020年:第1位
2021年:第2位
2022年:第3位
2023年:第2位
スウェーデンでは、SDGsに対する高い意識や、サステナブルな教育などから、リサイクル率が向上し続けています。家庭ゴミにおけるリサイクル率は、脅威の99%です。世界基準のリサイクル率で考える場合、日本は燃焼分(サーマルリサイクル)を含めないとリサイクル率が19%程度のため、その差は一目瞭然です。
スウェーデンの特徴的な取り組みとして、学校で学ぶ科目の中に、国語、算数などの科目とならんで「環境」という科目があり、通常で学ぶ環境についての知識以上の勉強をすることができることや、都市の中には「エコシティ」と呼ばれる地区があり、燃えるゴミで暖房用の湯を沸かす、汚泥からバイオガスを作ってキッチンのガスレンジに使う、ゴミ処理場に直結する菅で繋がれたゴミ収集場がある、など環境配慮に特化した生活を送ることができるように整備されています。
日本の位置付けは?
環境問題における日本の位置づけは、以下の通りです。
環境問題における日本のレベル
日本では、多くの家庭で、空き缶やペットボトル、新聞紙、段ボールといったリサイクルし、再利用できるごみの分別に取り組み、地域で指定された日に、指定された方法での排出に協力しています。現在は「生ごみ」や「プラスチック(資源ごみとは別のものとして)」など、よりリサイクルを効率化するために新しく分別する種類を増やし始めている自治体もあり、万が一異物が混入していた場合、ごみを集めてもらえないこともあるでしょう。ここまで徹底してごみを分別している国は、世界の国々の中でも極少数です。そのため、日本は世界の国の中でもリサイクル率がトップクラスだと思っている人も多いかと思います。しかし、実際に環境省が公表する平成30年度におけるリサイクル率では、上述したようにサーマルリサイクルを含めずに換算すると、19.9%と低い割合であり、EU加盟国と比較した場合、日本のリサイクル率は圧倒的に低くなっています。ドイツ、韓国、オランダ、スウェーデンなどは50%以上のリサイクル率です。
日本のリサイクル率の低さは生ごみの焼却処理が原因と言われています。一般廃棄物の30~50%を占めると言われている生ごみを焼却するか、分別し、コンポストなどの仕組みを使い堆肥化するかで、日本のリサイクル率は大きく向上する可能性を秘めています。ちなみに韓国では生ごみを焼却せずにリサイクルする割合が97%を超えているそうです。他国とのリサイクルに対する感覚の差が理解できましたでしょうか?これを機に生ごみの堆肥化に挑戦してみるのも日本のリサイクル率向上の手助けになります。ぜひ取り組んでみてください。
\日本からも近い、香港の環境問題事情は?/
他国の環境配慮を促進
日本国内において、需要拡大が困難な、先進的な環境対策に関連する技術を新興国や途上国に展開し、事業を拡大させている企業は多くあります。例えば、大阪ガスとグループ会社である大阪ガスエンジニアリングでは、JICAの民間技術普及促進事業を通じ、インドネシアに長年に渡り培ってきた大気浄化技術を導入することで、新たな市場を切り開く予定です。
フィリピンやインドネシアのような新興国では、急速に経済成長したことで、インフラや車両整備が追い付いておらず、交通渋滞による自動車が排出するガスが深刻な問題となっています。このような国に比べて環境対策やそれにおける技術革新が進んでいる日本は、他国での環境配慮を支援しているケースも少なくありません。
まとめ
いかがでしたでしょうか?先進国と呼ばれる、世界の中でも先を行く国々は環境問題解決に向けて様々な取り組みを行っているものの、技術や経済の発達に伴い、温室効果ガスを多く排出してしまっている現状を知ることができたと思います。また、先進国に追いつかんと発展に力を入れている新興国では年々二酸化炭素排出量が増加傾向にあることもわかりました。世界全体がさらに発展していくためには、地球環境への影響も発展の必須項目の1つとして含める必要があるのが現代です。
今回取り上げた環境先進国と言われるドイツ・スウェーデンのように過去に環境問題の影響を受けて、取り組みや方針を見直した国々を良い見本に、日本もさらなる環境対策を行っていく必要があると思います。日本でもレジ袋の有料化が記憶に新しいですが、外国では使い捨て容器が規制され始めた国や、ゴミの廃棄を有料化しようとする動きがある国もあるそうです。未来の地球を守るために、今後もこのような動きが加速することが見込まれますが、そんな事態に対応できるようにあらかじめ世界や日本の現状を知っておくことが重要です。
\個人でできる環境配慮の取り組み一覧!/
豆知識|先進国、途上国ってどうやって決まるの?
先進国と途上国を分ける明確な線引きはありませんが、一般的に先進国とは、経済的に高度に発展し、国民の生活水準が高く、社会的・政治的な制度が整っている国を指します。特徴としては、一人当たりの国内総生産(GDP)が高く、産業やサービス業が発展していること、道路、鉄道、電力、通信などのインフラが整備されていることがあります。
発展途上国または開発途上国と呼ばれる国は経済や産業が十分に進んでいない国を表す名称です。現状では東南アジア、南アジア、中東、アフリカ、ラテンアメリカ、NIS諸国の国々に多く、世界196カ国のうち、約150の国、およそ7割が発展途上国とされています。また、発展途上国の中でも急速に成長を遂げている、成長の最中にいる国々を新興国と呼んでいます。新興国とは、経済が急速に発展しているものの、まだ先進国と比べると一人当たりの所得や生活水準が低い国々です。
特徴としては、経済成長率が高く、産業やインフラの発展が進んでいること、貧困、不平等、インフラの未整備など、経済的な課題を抱えていることがあります。
【参考】
第15回 地球温暖化をめぐり途上国は先進国と対立しているのですか?《おしえて!知りたい!途上国と社会》(鄭方婷) - アジア経済研究所
CO2の排出量、どうやって測る?~“先進国vs新興国”|スペシャルコンテンツ|資源エネルギー庁
先進国と途上国のCO2排出量の現状と脱炭素化対策、最新の数字でどこまで進んでる? – HATCH |自然電力のメディア
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