ゴミ問題に立ち向かう取り組み
ここまで解説してきたようにインドネシアでは課題は多いものの、一方で確実に改善の動きも生まれてきています。
行政の取り組み

ジャカルタ特別州は2020年7月1日からレジ袋の無料配布禁止を施行。
大規模商業施設では分別回収ボックスの導入を促進し、廃棄物税の導入議論も行われています。
また、国レベルでは、Ministry of Environment and Forestry(インドネシア共和国環境林業省) を中心に、家庭ごみ・類似ごみ対策の国家政策および戦略「 JAKSTRANAS」 や、海洋ごみ対策の行動計画 Marine Plastic Debris Plan of Action 2017–2025 を策定・実施。これにより、プラスチックごみの海洋流出抑制を国家目標に据えています。
企業・スタートアップの参入
インドネシアで活躍する環境系スタートアップは、
● 企業向け廃棄物管理サービス
● コミュニティへの分別教育
● リサイクルプラットフォーム運営
などを展開し、官民連携で循環経済を支えています。
具体例として、 「クライメートテック/循環経済」のスタートアップである2021年創業のRekosistem は、収集・分別・処理・リサイクル/再資源化をワンストップで担う “廃棄物サプライチェーン管理” の仕組みを構築しています。
市民の意識変化

市民の生活の中では、SNSによる環境啓発、街のクリーンアップ活動、学校での環境教育など、若い世代を中心に行動が広がっています。
例えば、AJYELN(ASEAN-Japan 若手環境リーダーズ・ネットワーク) の若者メンバーらは、2024〜2025年にかけてインドネシア各地の中高生とともに「海洋プラスチック汚染啓発」「ごみ分別」「アップサイクル(不要プラを資源に)」をテーマにしたワークショップや清掃イベントを実施しています。2024年8月と9月にバリやその他地域で実施された学校でのセッションには、100人以上の生徒が参加。廃プラスチックを「ecobrick(エコブリック)」にするなど具体的な行動につながる教育も行われています。
日本に住む私たちが学べること
インドネシアのゴミ問題を見て感じるのは、日本も決して例外ではないという点です。
● 日本のプラスチック消費量は世界トップクラス
● 過剰包装・過剰品質の文化が根付いている
● 実質的なリサイクル率は想像ほど高くない
上記のように日本でも課題は多く、インドネシアの姿は“遠い国の話”ではありません。むしろ、インフラが整う前に都市化が進むと何が起きるのか、環境問題を放置するとどうなるかという、未来の警鐘としても捉えることができます。
【まとめ】ゴミ問題は「制度 × 文化 × 意識」がそろって初めて改善する

インドネシアのゴミ問題は、「インフラの未整備」「生活文化」「教育不足」「経済格差」など多くの要素が絡み合う複合的課題であることを現地で感じました。
今回初めて訪れたインドネシアのジャカルタ。街の様子やゴミの問題に関わる市民からは現地のリアルを感じることができました。一方で、情報として得ることのできた公園の分別箱や行政の規制、 ベンチャー企業の活躍、若者の活動は確実に社会が動き始めている証拠でもあります。地球規模での環境問題に向き合うためには、遠い国の課題を知り、自分ごととして考えることが第一歩です。
カンキョーダイナリーでは今後も、現地の空気感や市民の視点を大切にしながら、持続可能な社会へのヒントを発信していきます。


















