ゴミ処理システムの課題
インドネシアには廃棄物法があり、自治体ごとに回収ルールを設けています。しかし制度と現実の間には大きな隔たりがあります。
課題①:インフラ不足
処理施設や中継ステーション、焼却設備の不足は深刻で、ゴミ収集車も都市人口に対して圧倒的に足りていません。そのため、収集サイクルに乗らないゴミが街に溜まっていきます。
課題②:分別文化の未発達
「分別しても同じトラックで回収される」という市民感覚が根付いており、家庭レベルでゴミを丁寧に分ける意識がまだ広がっていません。
課題③:教育と周知不足
都市部の若者を中心に意識は変わりつつありますが、環境意識やモラルの改善は本当に難しく、社会全体へ浸透させるには時間を要しています。

観光地のモナス公園では色分けされたゴミ箱が整備されていました。ここだけを見ると環境先進都市のようですが、街中では同様の設備をほとんど見かけず、制度の浸透に大きな差を感じました。
“非公式セクター”が支えるリサイクル
インドネシアには、スカベンジャーと呼ばれる非公式の回収人(インフォーマルセクター)が多数存在します。彼らはプラスチックや金属など価値のある廃棄物を拾い、民間のリサイクル業者へ売却することで生計を立てています。
インドネシアのリサイクルの大部分はこうした非公式セクターに頼っていると指摘されていますが、取り組む人々の安全対策や衛生環境が不十分で、重大な健康リスクを伴います。

ゴミの山をかき分けて、売れる素材を探す人の姿がありました。社会の仕組みとして彼らに依存している側面がある一方、生活や安全を支える制度が整っていない矛盾を感じます。
日常に息づく「ゴミの文化」
国民に分別の意識が根付いていないというのは街の状況をみてもわかりますが、現地で実際に飲食店を訪れた際、日本と比較して強く印象に残った光景がありました。

飲食店で食べ終わったトレーに、自然な様子で吸い殻が置かれてそのままになっていました。“ゴミはとりあえずここに置けば誰かが片付ける”という感覚が、街中のゴミ増加につながっているのだと実感しました。公共空間における“共有の意識が弱い”と、どんなに制度を整えても効果を発揮しづらいというのは、インドネシアだけでなくどの国にも当てはまる課題のように感じます。
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