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脱プラスチックを目指す代替品は?環境と健康に配慮した素材のメリットとデメリット

脱プラスチックを目指す代替品は?環境と健康に配慮した素材のメリットとデメリット

・軽量であり、輸送や運搬の際の重量を軽減できる
・強度があり、耐久性が高いため、長期間使用することができる
・加工性が高く、形状やサイズを自由自在に変更することができる
・安価な原料から製造され、製造プロセスが簡単であるため、製品の製造コストを低く抑えられる

 

このような理由で様々な製品やパッケージに使用されているプラスチック。一方で環境や健康への影響が問題視されており、より持続可能な素材の開発やプラスチックの使用量削減が求められています。

どうして脱プラスチックが必要なの?

プラスチックは、廃棄物として環境に長期間残留することが問題視されています。まずは、プラスチックが引き起こしている被害から、プラスチック問題の本質を捉えてみましょう!

環境問題

①海洋汚染

海洋プラスチックごみ

 

海洋に流入するプラスチックの量は、毎年800万トン以上に上ると推定されています。ある研究によると、世界の海に流出したプラスチックごみのうち、約26%は目視できるサイズのプラスチックごみとして、約7%はマイクロプラスチックとして、いまも漂流と漂着を繰り返しています※1。海に流れ出たプラスチックは、海洋生物の誤食や絡まり、生態系の変化、海水や砂浜の汚染につながる可能性があります。

②土壌汚染

プラスチックは化学的に安定していて、自然界で分解されにくいため、土壌汚染の原因に。不適切な廃棄や処理によって、土壌に埋められたり、焼却されたりすると、その微小な粒子が土壌に混入して汚染を引き起こすことがあります。

プラスチックに含まれる化学物質が土壌に浸透すると、土壌中の微生物や植物、地下水などに悪影響を与えることが。また、土壌中のプラスチックの微小粒子は、食物連鎖によって生物体内に取り込まれることがあり、人間の健康にも影響を及ぼす可能性があると言われています。

 

③大気汚染

プラスチックの製造や処理には多大なエネルギーが必要ですが、そのエネルギーは化石燃料に依存しているため、二酸化炭素などの温室効果ガスが大量に排出されています。

また、プラスチックが太陽光や酸素によって経年劣化する過程で発生する微生物によって、メタンが発生することがあります。メタンは、二酸化炭素に比べて大気中に放出されるときの温室効果が約25倍も高いため、プラスチックが環境中で経年劣化することによって発生するメタンの量は、地球温暖化に大きな影響を与えると考えられています。

さらに、プラスチック製品は、軽くて丈夫で長持ちすることから、使い捨て製品や包装材として大量に使用されています。そのため、プラスチック廃棄物が増加し、その処理に伴う温室効果ガスの排出量も増加し続けています。

 

\企業や国の対応が気になる/

健康問題

プラスチック容器が熱や紫外線にさらされることで化学物質が食品や飲料に漏れ出したり、焼却により発生する有害物質が大気中に放出され、健康に悪影響を及ぼす可能性があります。さらに、風化によってプラスチックの微小粒子が大気中に漂うこともあり、人間の呼吸器系に侵入することも。

リサイクル問題

プラスチックは種類や形状が多様で、混在して廃棄されることが多いため、リサイクルするための分別が難しいという問題があります。また、リサイクル時の適切な分別や処理には高い技術とコストが必要です。現在、世界的なプラスチックのリサイクル率は低く、回収されたプラスチックの大部分が廃棄されています。特に、途上国はリサイクルインフラが不十分であり、プラスチックの廃棄物が環境汚染や健康被害が懸念されています。


プラスチックのリサイクル問題

 

プラスチックのリサイクルには、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクル、サーマルリサイクルの3つの方法があります。

 

マテリアルリサイクルとは

プラスチックを破砕・粉砕して、原材料と同じプラスチック製品を作り出す方法。この方法は、プラスチックの品質を落とすことなくリサイクルできるため、再利用される製品の品質も高いことが特徴。しかし、プラスチック製品の形状や種類が限られるため、使える場面は少なくなってしまいます。

 

ケミカルリサイクルとは

プラスチックを化学反応させて、新たな原料に変換する方法。この方法は、マテリアルリサイクルよりも幅広い種類のプラスチックが対象になるため、リサイクル率を上げることができます。しかし、必要なエネルギーや技術が高いことが課題となっています。

 

サーマルリサイクルとは

プラスチックを熱分解して、発生する熱をエネルギーとして回収して利用する方法。プラスチック製品の形状や種類に制限がありませんが、燃焼処理によるCO2排出や、熱エネルギーの必要性が課題となっています。日本の場合、プラスチックのリサイクル率は全体で80%以上ですが、そのうちの約2〜3割がマテリアルリサイクル、6割近くがエネルギー利用を占めています※2。

 

輸入規制

環境問題や健康問題が深刻化する中で、プラスチックの輸入量を制限する動きが広がっています。中国は一部のプラスチック廃棄物を輸入禁止に、EUはシングルユースプラスチック製品の輸入を制限する措置を講じました。また、特定のプラスチック製品の輸入に対して課税を行う場合もあり、アメリカは中国からの一部のプラスチック製品に対して関税を課しました。このような動きの広がりによって、国内で消費したプラスチックごみが行き場を失うことが心配されています。

 

代替プラスチックのメリット・デメリット

従来のプラスチックと比べて環境に優しいプラスチックとして開発されたバイオマスプラスチックや生分解性プラスチック。バイオマスプラスチックは、プラスチックが石油由来であること、生分解性プラスチックは、プラスチックが自然界で分解されにくいことを背景に誕生しました。そんな代替プラスチックは本当に環境に優しいのでしょうか?


プラスチックの種類

バイオマスプラスチック

バイオマスとは、植物由来の生物資源のことで、トウモロコシやサトウキビ、木材などが使われます。植物由来の原料でできたバイオマスプラスチックを焼却する時に排出される二酸化炭素は、原料である植物が成長する過程で光合成により吸収した二酸化炭素。もともと空気中にあった二酸化炭素が放出されるだけなので、地球上の二酸化炭素濃度を増やさないカーボンニュートラルという考え方から、環境に優しいと言われています。

しかし、バイオマスプラスチックは原料が植物由来であるだけで、構成成分は従来の石油由来プラスチックと変わらないものも含まれます。自然界では分解されず、海洋プラスチックごみ問題の解決につながるわけではありません。

 

生分解性プラスチック

生分解性とは、微生物や自然界の環境下で自然に分解される性質のこと。生分解性プラスチックは一定の条件が揃った自然界で分解されるため、一般的なプラスチックと比較して環境に対する影響が少ないですが、それ自体が完全に無害であるわけではなく、分解される過程で微量な化学物質が放出される可能性が。

生分解性プラスチックには、石油由来のものと植物由来(バイオマス)のものがありますが、 生分解性プラスチック「配合」という製品は、石油由来プラスチックが大部分を占めていて、分解されるとマイクロプラスチックを増やしてしまうという問題があります。

 

プラスチックの代替素材を探そう!

バイオマスプラスチックや生分解性プラスチックの特徴を考えると、やはりプラスチック製品の使用量を減らし、代替素材への転換を進めることを目指す「脱プラスチック」は必要そう。流通しているプラスチックの回収と循環利用・量り売りモデルへの転換など、さまざまな方法がある中で、今回はプラスチックの代わりに使える素材をご紹介!

木材資源である紙は、プラスチックの代替素材として採用されることが多い素材。レジ袋有料化の際も、ポリ袋から紙袋へ切り替える事業者も多かったと思います。さらに、リサイクル率も高いのでサステナブルな優秀な素材といえます。

海藻

100%海藻由来で、紙のような印刷が可能な新素材があります。海藻を原料としているため、「食べられる包装材」としてやインスタントの調味料パックなどへの活用が考えられています。

寒天

ところてんやゼリーの材料に使われる食品素材の「寒天」は、使用後に海や土に混ざっても環境に優しく、フィルム状のパッケージや厚みのある緩衝材などがあり、幅広い用途で使用できる素材として注目されています。さらに、配送用バッグや結束バンド、ボールペンなどの代用も期待されています。

麦わら

プラスチックストローの代替品として麦わらを使うことができます。そもそも、ストロー(straw)は日本語で「麦わら」という意味で、昔はプラスチックではなく麦わらのストローが使われていました。

木材

木はデザイン次第で様々な製品に切り出せるため、プラスチック製のスプーンやおもちゃなどに使用されています。木材の種類によってはプラスチックと比べて軽い場合もあり、プラスチック製品を軽量化するために使われることも。

 

木材の利用が環境問題解決に貢献する理由は?

木材は大気中の二酸化炭素と根から吸い取った水からできているので、木材を=大気中の二酸化炭素を固定化したものということになります。また、プラスチックのもとになる石油は一方的に消費することで枯渇していきますが、木材は持続的な資源です。

ポイントは、、植えて、育てる。収穫してまた使う、また植える、また育てる...という循環を続けること。カンキョーダイナリーでは長野県森林組合さんのご協力のもと、木を植える活動を行っています!

竹は、成長が速く、生分解性があり、自然に再生するため、環境に負荷をかけずに持続可能な生産が可能と言われています。ストローや歯ブラシ、トイレットペーパーなどの生活用品や、食器やかごなどの容器が有名です。

バガス

バガスは、サトウキビの茎から搾り取ったジュースを煮詰めて精糖する際に出る副産物。家畜の飼料や堆肥やエネルギー源として利用されるほか、紙の原料にもなり、「バガスペーパー」はプラスチックの代替として利用することができます。

セロハン

透明であるためプラスチック製のフィルムと混同されがちなセロハンですが、実は天然の植物繊維であるセルロースが原料。塩化ビニールやポリエチレンなどの合成樹脂と比較して、環境に優しく、生分解性に優れているため、エコフレンドリーな素材として注目されています。

ストーンペーパー

日本にとって、石灰岩は鉱物資源の中で唯一国内自給率が100%を越える資源。そんな石灰石を石油由来の樹脂などと混ぜることで、レジ袋やクリアファイルなどプラスチック全般の代替品として利用できます。石油由来の樹脂も使用しますが、製造段階で水を使用しないため、排水による水質汚染や土壌汚染の抑止となります。

 

脱プラスチックの王道!紙への置き換え

紙製品のメリット

①持続可能な資源である木を使う

枯渇資源である石油から作られたプラスチックに対して、紙の原材料である木は、植樹や適切な森林管理を行うことで再生が可能。また、木はCO2を吸収するため、役目を果たし焼却処分されたとしてもカーボンニュートラルなサイクルを生み出すことができます。

 

森林の破壊と管理のバランス

「森林破壊につながるのでは?」という疑問もあるかもしれませんが、森林を管理し、有効活用していくことが大切。森林は放置すると、木が密集しすぎて本来成長すべき若木が育たなかったり、管理が行き届かず土砂崩れの原因につながったりと、さまざまな問題を引き起こします。さらに、木は成長しきると光合成の作用が緩やかになり、二酸化炭素の吸収率も下がると言われています。

 

②生分解し自然に還る

海に流れ出しても分解しきれず、マイクロプラスチックとなって恒久的に海に漂うプラスチック。一方紙は、自然由来の素材で作られているので、自然の条件下で分解されます。ごみが意図せず土壌や海洋に流出してしまう可能性を考えると、『紙に置き換えられるものは紙に置き換える』という選択をする企業が増えています。

 

③高いリサイクル率

 

回収された古紙のその先は?

回収された古紙が、その先でどのようにリサイクルされているのか、考えたことはありますか?実は製紙工場へ運ばれる前に、古紙回収業者へ運ばれて種類ごとに分別されているんです。
家庭や企業だけでなく、古紙回収業者側でも分別することで、良質な再生紙を作ることができ、さらに製造時に必要なエネルギーも最小限で済みます。

 

④おしゃれ

贈答品やアパレルで紙袋が使われるように、紙製品にはおしゃれなイメージがあるのも特徴。環境に優しいという理由で紙を選ぶのはハードルが高いですが、「おしゃれ」「好き」といったポジティブな感情で紙を選んだ結果、環境に良かったという流れができるのが、紙のメリットです。

 

\紙袋のデザイン例掲載あり/

紙製品のデメリット

紙は湿気や紫外線に弱く、時間の経過とともに劣化していくため、長期保存に向かないとされています。簡単に製造や加工が可能で、耐久性や防水性があるプラスチックを比べると、紙は水に弱く、食品や医療で使われるパッケージとしては鮮度保持能力が劣ることも。また、安価なプラスチックと比較して、企業にとっては原材料のコスト増になってしまう場合があります。

脱プラスチックで紙に置き換える「紙化」のポイント

①森林認証を受けた紙を選ぶ

森林認証制度とは、適正に管理されていることが認められた森林から取れる木材について、生産から流通、加工の全工程に認証ラベルを付けることで、持続可能な森林の活用を図る制度。

また、森林認証以外にも環境負荷低減につながる製品やサービスに付けられる『環境ラベル』もあります。それらのマークを記載することができる、環境に配慮した紙を使用することが、紙化のポイントです。

 

「木を植えるマーク」と「海を守るマーク」

環境に配慮したインクや紙、植樹や海洋保全活動への貢献など、環境に配慮されたことを表すマークが増えてきました。カンキョーダイナリーを運営する大昭和紙工産業でも、マーク付きの製品やマークのライセンスサービスをご用意しています。店舗や企業の環境対策にお困りの方は、まずは環境対策ガイドをご覧下さい!

 

②使い捨てを減らす

プラスチックと比較して、再度紙に生まれ変わる仕組みがある程度確立されているため、分別することで資源になります。また、使い終わった紙パッケージはそのおしゃれさから再利用されることも多く、消費者のリユースやアップサイクルによって、紙化の環境負荷軽減の効果を高めることができます。

 

脱プラスチックで紙に置き換える「紙化」の例

色々な紙製品

ストロー

プラスチックストローの環境への悪影響は、ウミガメの鼻に突き刺さった衝撃的な動画とともに、世界で指摘されています。ファミリーレストランやファストフード店の一部では、紙製ストローに置き換える動きが広がっています。

 

コップ

コーヒーやジュースなどの飲み物に使われるプラスチック製コップは、紙製コップに置き換えることができます。最近ではホットドリンクだけでなく、アイスドリンクも紙コップで提供されることも。

カトラリー

フォーク・スプーン・マドラー・使い捨てのプラスチック製カトラリーは、紙製カトラリーに置き換えることができます。環境に優しいだけでなく、プラスチックと比較しておしゃれなイメージが演出できることも、テイクアウトやホテルで使われる理由に。

テイクアウト容器

飲食店のテイクアウトなどで使われるランチボックスは、プラスチックだけでなく紙素材のものでもサイズやデザインの種類が豊富。中には、揚げ物や汁物のテイクアウトにも使われる防油加工されたものや、電子レンジ対応のものも。

ショッピングバッグ

プラスチック製のショッピングバッグやレジ袋は紙袋に置き換えられています。紙袋は中身も見えずおしゃれなイメージなので、買い物をして持ち歩く人にも嬉しい変化となります。

お菓子のパッケージ

スーパーやコンビニのお菓子売り場を見ると、もともとプラスチック包装だった商品で、紙パッケージに変わったものが。また、もともと紙箱に入っていたお菓子のパッケージでは、森林認証の取れた紙への切り替えも進んでいます。

アメニティ

歯ブラシやクシなどのアメニティを入れるプラスチックの包装を、紙パッケージに変えるホテルが増えています。また、アメニティ本体の脱プラスチック化も進んでいて、持ち手が紙でできたカミソリや紙素材でできたコームの開発なども進められています。

書類ファイル

オフィスでは一度使ったら捨てられがちなクリアファイルも、紙製のファイルに置き換えることができます。紙には様々な色や柄、テクスチャーのバリエーションがあるため、紙製ファイルもデザイン性が高く、ノベルティやビジネスシーンでの利用にも適しています。

緩衝材

ネットショッピングなどで活躍する緩衝材もプラスチック製のエア緩衝材ではなく、紙で届くことが増えました。消費者にとっては届いたらすぐに廃棄してしまう緩衝材も、紙であれば古紙回収に出すことで資源として処理することができます。

脱プラスチックはSDGsへの貢献に

SDGsは、2030年までに貧困、飢餓、格差、気候変動、環境破壊などの世界的課題を解決することを目的として設定された国際目標。


SDGs

 

脱プラスチックや紙への置き換えは、提供する企業や購入する消費者が意識し、「12.つくる責任つかう責任」を果たしたり、プラスチックの利用や処理に伴う温室効果ガスを削減することで「13.気候変動に具体的な対策を」したり、海洋プラスチック問題や土壌汚染の原因を取り除くことで「14.海の豊かさを守ろう」「15.陸の豊かさも守ろう」といったSDGs目標への貢献に繋がります。

脱プラスチックを目指す中で、今後もプラスチックの代わりになる素材の開発がますます進みそう。今後の脱プラスチックの動きにも注目です!

 

 


 

(参考1)九州大学「環境中に漏れた全世界のプラスチックごみ約60年分の行方を解析

(参考2)一般社団法人プラスチック循環利用協会「プラスチック3つのリサイクル

(参考3)公益財団法人古紙再生促進センター「数字で見る古紙再生

脱プラスチックを目指す代替品は?環境と健康に配慮した素材のメリットとデメリット

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