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「Our Blue World」 | 水と共に生きる人々の歴史と未来を描くドキュメンタリー

「Our Blue World」 |  水と共に生きる人々の歴史と未来を描くドキュメンタリー

ダイナリー図書館では、これからの地球のために、自分ごととして環境問題に取り組むキッカケとなれるよう、カンキョーダイナリー(環境>)おすすめの本や映画などをご紹介していきます。

水と共に生きる人々の歴史と未来

地球も人も水と共に生きてきた

地球の歴史は水と共にあり、人にとってもまた水は欠かせない存在です。

人類の歴史は水と共に発展してきました。世界中で水は信仰の対象であり、文化の起源でもあり、生活の礎として密接に関わる存在です。

 

タイの水かけ祭り、カンボジアのアンコールワット周辺の治水技術や、アンコール朝最大の人工巨大貯水池「バライ」、キリスト教の洗礼、ペルー・アンデスの祭り、東南アジアでの雨季に対応した高床式住居、ミシシッピ川流域で生まれた音楽・ブルース。

本作では水と人との歴史や文化を、世界各地の美しい映像と共に描いています。

 

水との関係が壊れてしまった理由は?

近代化以降、世界中で水と人との関係は壊れ、洪水や干ばつ、森林火災、そして生物多様性の損失など、様々な問題が起きています。

 

大規模な農耕により、森林や湿地帯といった土が水を蓄える環境が失われています。また、ダム建設や工業化に伴う水質汚染も問題となっています。

川を制御しようと堤防を設け川を直線に形を変えてしまったことは、溢れた川の水の行き場を無くし、かえって川の氾濫を起こしました。

そして街の地表をコンクリートで覆ってしまうことで土に水が染み込まなくなり、川は急激に増水し世界各地の都市で洪水が起きています。

 

地球温暖化によって海水面の温度は上昇し、大気中の水蒸気量は増加します。その大気中の水蒸気によって強い雨が増加する一方で雨が全く降らない日も増え、世界中で干ばつも増えます。

人々の近代化以降の営みによって環境を傷つけ、その行動は人々の生活へ多大な影響を与え、人々を傷つけることにもつながっています。

 

\水の問題は土の問題?!/

 

古くから伝わる知恵や現代技術で水との関係を取り戻す

本作では、古くから伝わる知恵や現代の技術・システムを生かし、水との関係を取り戻そうとする取り組みが紹介されています。

 

中国で生まれた「スポンジシティ構想」は、水を都市から排出するのではなく、保水し循環させることで最大限に活用するシステムです。緑地や人工的な湿地帯を計画的に配置したり、雨水が集まる池を作ったりし、帯水層に水が浸み込むようにしています。中国の取り組みは世界でも取り入れられ始めています。

 

古くからたびたび大洪水が起きているアメリカ・ミシシッピ川周辺の地域では、流域の各自治体が協力して沼地や湿地帯の整備などを行っています。河川を堤防を使って制御するのではなく、沼地などに水を貯め、増水した川の水を適切に逃す方法を取っています。

 

また、ニュージーランドでは2017年、マオリ族の信仰の対象でもあるワンガヌイ川に「法的な人格」を認める法律が可決されました。将来の環境破壊から守るため、ワンガヌイ川には人と同じように健康である権利が認められています。

 

世界各地でその地域に合わせた取り組みがありますが、どの地域でも共通して「水は制御する存在ではなく、共に生きる存在である」と認められつつあります。そしてその考え方は世界中に広まっています。上記に挙げた例以外にも、本作では世界各地の人と水との古くて新しい関係を描いています。

 

水と共に生きる人の未来は明るい

環境問題や生物多様性の問題は多くの要因が複雑に絡み合っているため、私たち人間の存在が環境にとっては悪影響で、一人一人が行動を起こそうとも、変えられることはないのではないか、と悲観的に考えてしまいがちです。しかし、この映画全体は明るく、希望を感じられる印象を持ちました。

 

地球の歴史や人々の暮らしと共にある水、そしてこれからも水と共に在ろうとする人々を描く本作品は「世界中で様々な取り組みが広がる今、これからも一人一人が気付き、行動すれば未来は明るい」という脚本家ポール・オキャラハン氏からの力強いメッセージを感じます。

みなさまもぜひ本作を観て、水と共に在ろうとする世界の人々の取り組みを知り、明るい未来を感じていただきたいと思います。

 

本作は駐日アイルランド大使館アイルランド政府商務庁主催の上映会にご招待いただき、鑑賞してきました。上映会へご招待いただいたこと、本記事での紹介にご快諾いただいたことを感謝申し上げます。

 

トレーラー映像

 

 

\海面上昇は陸上の水にも関係が/

 

\山、川、海は全てつながっている!/

 

【作品詳細】

タイトル:Our Blue World: A Water Odyssey

ジャンル:ドキュメンタリー

ディレクター:Ruán Magan

脚本:Ruán Magan Paul O'Callaghan

公開:2024年

言語:英語

「Our Blue World」サイトを見る

 

\読みたい本がきっと見つかる!/


(参考)

国立研究開発法人 国立環境研究所 | 地球温暖化と「水」

WWFジャパン | 目撃者の証言:温暖化が変える川の環境

Skyrocket株式会社「NewSphere」 | 温暖化が進むなか、中国で都市洪水を防ぐ「海綿都市(スポンジシティ)計画」が進行中

IATSS Review(国際交通安全学会誌)45巻 2号 | アメリカ連邦治水法と費用分担システム(伊澤正興,2020年10月)

ナショナルジオグラフィック | ニュージーランドが川に「法的な人格」を認めた理由

「Our Blue World」 | 水と共に生きる人々の歴史と未来を描くドキュメンタリー

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まとめ

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