Carton Picker 島津冬樹 | 段ボールから始まる世界の旅#2

Carton Picker 島津冬樹 | 段ボールから始まる世界の旅#2

世界中で拾い集めた段ボールを、おしゃれで使いやすい財布やコインケースにアップサイクルする島津冬樹さん。大手広告代理店に入社後も募り続けた「段ボール愛」を原動力に、「段ボールアーティスト」や「段ボールピッカー」の肩書きで活動する島津さんに、カンキョーダイナリーがインタビュー。

 

#2では、アップサイクルを手がけるクリエイターとしての地球環境の見方や、「不要なものから大切なものへ」というコンセプトに至る幼少期の原体験を伺いました。



◀︎インタビューは#1はこちら。

Carton Picker 島津冬樹 | 段ボールから始まる世界の旅#

段ボール財布で呼び起こされた、子どもの頃の「作る喜び」

「不要なものから大切なものへ」というコンセプトはどのような原体験から生まれたのでしょうか。

子どもの頃からものを作るのが好きでした。もちろん買うこともあるのですが、作ったものを使う喜びっていうのは購入できるものではないので、そこは小さい頃から素敵だなって思っていました。親が作ってくれた手提げ袋とか、家庭科の授業で作ったものとか。

大学生になって段々忙しくなって、なかなか自分で作って使うということもなくなっていたので、「作った」っていう喜びが段ボールで財布を作って、使った時に久しぶりに呼び起こされました


Carton Picker|段ボールピッカー 島津冬樹

小さい頃からものづくりが好きだったそうですが、どんな幼少期を過ごしていたのでしょうか?

勉強を全くしてこなかった小・中・高時代でしたが、親は好きなものに対して協力してくれて、色んな道があることを教えてくれていました。例えば、僕が最初にハマった貝だったら貝学者とか貝博士とか、何かしらそういう将来に繋がることをなんとなく教えてくれていたんです。

もちろん大多数がそこに入るんですけど、今世の中にある職業だけが全てじゃなくて、自分がどうしても世の中にある職業に合わないなら、自分でその職業を作っていくしかない。僕はアーティストなのかコレクターなのか分からない。この曖昧さっていうのが、道を選ぶ中であっても良いと思うし、これからどんどん自分で発信していく世の中になると思うので、今ある職業に囚われることはないのかな。

僕も親になって、「勉強ができないとクラスでいじめられるんじゃないか」って思っちゃうこともあります。でも、成績だけで見てしまうと窮屈ではあるので、好きなものが見つかるように色々な経験をさせてあげることがすごく大切だと思います。僕は勉強よりは圧倒的に遊びの方が多かったですが、それでも許してくれていたのはありがたかったなと思います。

今の島津さんの活動を親御さんはどのように見ているのでしょうか?

小さい頃からそんなに変わっていないので腑に落ちているみたいです。貝拾いから始まったことが今は段ボール拾いになっている。貝を拾って、標本を作って親や先生に見せていたのが、段ボールを拾って、財布を作って人に見せる。小さい頃にしていたことが今に繋がっているので、親も楽しんでラジオとかを聞いてくれています。

「これかっこいいね。よく見たら段ボールだね。」を目指す

ご自身の活動が「アップサイクル」や「サステナブル」という文脈で取り上げられることについてはどのように捉えていますか?

自分だけの活動にとどまらず、何か役に立っていることはいい事だなって思います。特に、この先大きくなっていく子どもたちに向けたワークショップでは、小さい頃にそういうことを体験しておくだけで、「こういうことができるんだ」っていう可能性を与えられるのは素敵なことなんじゃないかなって思います。

財布を初めに作った時は、賛否両論で「これは売れないだろう」っていう人も、「これは良いアイデアだ」っていう人もいて、その時はSDGsとかサステナビリティっていう言葉もあまりなかったので、そういう視点で見る人もいませんでした。


Carton Picker|段ボールピッカー 島津冬樹

僕自身も調べていくうちに、段ボールはリサイクルされるもので、自分が活動することで何かが変わるのではなくて、逆にリサイクルの仕組みを崩しているんじゃないかと思って、その時から環境を打ち出すのはやめよう思っていました。あくまでも自分の活動は段ボールが好きというところからスタートしていて、それが財布になる面白さを立たせていきたいと思っています。

僕が大切にしているのは、「かっこいい」「かわいい」という人の感情で、「環境に良さそう」っていう気持ちって色々考えた結果になってしまうので、「これかっこいいね。よく見たら段ボールだね」っていう順番はかなり意識しています

国内外で開催されているワークショップには、どんな方が参加されていますか?

ものづくりが好きとか嫌いとか関係なく、メディアなどで見て、自分で作ってみたかったっていう人が多いですね。あとは、財布の本が出たときに買って下さって、それを見て自分で作ってみたけど、一度教えてもらって作りたいとか。


(写真提供:Carton Studio)


申し込み型のイベントだけでなく、流動型のイベントでは久しぶりにカッターやボンドを使う人もいますが、喜んで帰ってくれます。あまり「環境」を出しすぎて幅を狭めることは避けたいなと思っています。

島津さんの作品には、誰もが使ってみたくなるような魅力があります。「不要なもの」を「大切なもの」に生まれ変わらせる時に意識していることは何ですか?

かっこいいアイテムの1つであって欲しいと思っています。よく「段ボールで服とか作れないのか」って聞かれることもありますが、何でもかんでも段ボールで作るのではなく、革のバッグから段ボールの財布が出てくるようなことで良いと思っています。段ボールのダサさが出ないためにどうすれば良いかというと、段ボールだけにこだわらないっていうのがあります。今も段ボールの什器を作っていますが、高級そうな木とか金属とか、そういう素材を使うことで段ボールが引き立つという考え方です。


Carton Picker|段ボールピッカー 島津冬樹が制作中の段ボールと木材を使った什器

現在制作中の、段ボールと木材を使った什器。


かっこいいかどうかは、自分がそう思うか、使いたいと思うか。それを鍛えるにはセンスを磨くしかないですね。常に流行を頭に入れながら作るというのも大切かなと思います。色んな企業とのコラボで「こういうブランドが好きな人も段ボールを使ってくれるんだ」っていう気付きや、ワークショップで「この段ボールでどう仕上がるんだろう」って思っていたものがかっこよくなるっていう気付きがよくあります。

今後はどのような活動をしたいと考えていますか?

僕がずっと作りたかった、世界中のどんな人でも拾った段ボールをアップすることができる『CARTON PICKER FINDER』というアプリを作りました。今年あたりから「段ボールを拾うこと」にフォーカスしています。段ボールを拾う人って世界中にいるのかいないのか知りたいし、段ボールが好きな人のコミュニティを作りたいと思っています。

もっと段ボールの良さに気付いている人もいるかもしれないし、自分も世界中の段ボールを見てみたいけど、生涯でいける国が限られている中で、ウェブアプリが一つのプラットフォームになることを目指しています。作らないと好きって伝える場所がないじゃないですか。ゆくゆくは段ボールの交換ができたり、段ボール版SNSみたいになったら良いですね。

島津さんの段ボールコレクション

Carton Picker|段ボールピッカー 島津冬樹の段ボールコレクション

国と地域ごとに分けて、世界中で拾った段ボールをコレクションしている。

ベビーバナナの箱

Carton Picker|段ボールピッカー 島津冬樹の段ボールコレクション

バナナの箱って世界中で同じようなものしかないんですけど、これは珍しいなっていうものです。チリのバナナの箱をオランダで拾いました。

イスラエルのビザの箱

Carton Picker|段ボールピッカー 島津冬樹の段ボールコレクション

ヘブライ語が書いてあります。ピザの箱は世界中にありますが、翻訳すると「アツアツ」とかそういう意味だったりすることが多いです。翻訳には、画像上の文字を翻訳してくれるアプリを使ってます。

ロシアのポテトチップスの箱

Carton Picker|段ボールピッカー 島津冬樹の段ボールコレクション

◀︎インタビューは#1はこちら。

現在の「段ボールピッカー」としての活動に至るまでの経緯や、拾い集める中で知った世界の段ボール事情、段ボール財布のこだわりのポイントを伺いました。

Carton Picker 島津冬樹 | 段ボールから始まる世界の旅#


編集後記

自分の「とにかく段ボールが好き!」という感情を大切にする島津さん。コレクションしている段ボールについて語る姿には、段ボールそのものへの愛と、段ボールをデザインした誰かへのリスペクトが溢れていました。島津さんが段ボールへの愛を活動の原動力にするように、地球への愛を原動力に行動できる世の中になれば、環境問題への取り組みももっとワクワクするものになりそうな気がしました。

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Profile

島津冬樹

1987年生まれ。多摩美術大学卒業後、広告代理店を経てアーティストへ。2009年の大学生在学中、家にあった段ボールで間に合わせの財布を作ったのがきっかけで段ボール財布を作り始める。2018年自身を追ったドキュメンタリー映画『旅するダンボール』(監督:岡島龍介 / 配給:ピクチャーズデプト)が公開し、各国のフィルムフェスティバルで高い評価を得る。他方で上海デザインフェスティバルなど、中国のアート・環境系のイベントに多く招聘されている。著書に「段ボールはたからもの 偶然のアップサイクル」(柏書房) / 「段ボール財布の作り方」(ブティック社)がある。

 

https://carton-f.com

 

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