あなたはゴミの分別をおろそかにしていませんか?
私たちの生活の中でも、「ゴミ捨て」は重要な習慣です。私たちが日々何気なく捨てているゴミの中には、適切に分別することによって、資源としてリサイクルできるものが含まれています。
それでは、ゴミを分別しなければどんな問題が起きるのでしょうか?環境問題解決にも貢献する「ゴミの分別」について、わかりやすく解説します。
ゴミの未分別による環境への影響
まずはじめに、ゴミの分別をおろそかにすると、どのような影響があるのでしょうか?環境への影響から見ていきましょう。
地球温暖化
ゴミを分別しないと、リサイクル可能な資源が無駄になってしまいます。例えば、プラスチック製品は適切に分別されればリサイクルされ、新たな製品の原料として利用できます。しかし、分別せずに燃えるゴミとして処理されると、焼却時に大量の二酸化炭素やメタンガスなどの温室効果ガスを排出してしまいます。
また、ゴミの分別をしないことは、資源の無駄遣いだけでなく、新たな資源の採掘や製造過程での温室効果ガス排出にもつながります。例えば、リサイクル率が97%を超えるアルミ缶を分別せずに捨てると、ボーキサイトと呼ばれる鉱石から新たなアルミ缶を作るために多くのエネルギーが必要となり、結果として温室効果ガスの排出量が増加してしまいます。
海洋プラスチックゴミによる生態系への影響
海洋ゴミの大半はプラスチックのゴミだと言われています。海洋へのプラスチック流出は増え続けており、2050年には、海洋へのプラスチックの流出の累積量が海洋中の魚の量より多くなるとの試算もあります。
海中に浮遊・沈殿するプラスチックゴミは長期間分解されず、海洋生物に絡まったり、誤飲されたりすることで、生態系に甚大な被害を与えています。特に深刻な問題なのは、「マイクロプラスチック」です。劣化したり、割れたりして小さく砕けたプラスチック粒子は、海洋生物の体内に蓄積され、食物連鎖を通じて人間の健康にも影響を及ぼす可能性が懸念されています。
【増え続ける海洋へのプラスチック流出】
出典:環境省『脱炭素に向けた資源循環をとりまく状況』p.11
\海洋プラごみとマイクロプラスチック/
土壌汚染や水質汚染
不適切な分別によるゴミの埋め立て処理は、深刻な環境問題を引き起こします。 埋め立て処分場からは有害物質が浸出し、周辺の土壌や地下水を汚染する可能性があります。このような汚染は、生態系への悪影響だけでなく、人間の健康にも直接的な脅威となります。
【土壌汚染の影響】
出典:環境省『土壌汚染対策の仕組み』p.2
ゴミを分別するメリット
ゴミの分別は、私たちの日常生活に深く根ざした重要な習慣です。一見面倒に感じるかもしれませんが、その影響は私たちの暮らしや環境に大きく及びます。適切な分別がもたらす恩恵と、怠ることで生じる問題点について見ていきましょう。
ゴミを分別するメリット
「ゴミの分別」と聞くと、面倒に感じる人もいるかもしれません。しかし、ゴミを分別すると、その影響は私たちの暮らしや環境に大きく貢献します。 適切にゴミを分別することで、さまざまなメリットが生まれるのです。ゴミを分別することで、具体的に以下のメリットが生まれます。
リサイクル効率の向上
ゴミの分別は、リサイクル効率を大幅に向上させる重要な取り組みです。リサイクル設備では、紙、ガラス、金属など、単一の素材に分別されていないと、再利用するための資源として利用することが困難です。
ことプラスチックに関しては、さまざまな種類があり、消費者が廃棄の段階で正確に分別することが、効率的にリサイクルするために大きく貢献します。
処理コストの削減
分別されたゴミは、処理施設での作業が効率化され、処理コストを削減できます。無分別のゴミを収集後に分別する場合、多くの人手と時間が必要となり、コストが増大します。適切な分別は、自治体のゴミ処理にかかる財政負担軽減にも貢献するのです。
新たな産業の創出
リサイクル技術の進歩に伴い、再生資源を活用した新たな産業が生まれています。これは、経済の活性化と雇用創出にもつながる大きなメリットです。
【ゴミの分別に関連する新たな産業の例】
- リサイクル技術開発産業:リサイクルが困難だった素材を再利用可能にする企業など
- エコ製品製造業:再生材料を使用した製品の製造
- 環境コンサルティング業:企業や自治体向けに、効率的なゴミ分別システムの構築や、環境に配慮した製品開発のアドバイスを行う専門家
- スマートリサイクルシステム開発業:AIやIoT技術を活用し、自動でゴミを分別するシステムの開発
- バイオマスエネルギー産業:食品廃棄物などの有機ゴミを利用したバイオガス発電や、バイオ燃料の製造など
ゴミを分別しないデメリット
ゴミを分別せずに混ぜて捨てると、正しく分別して捨てていれば生まれないはずの、多くのデメリットが生まれます。
処理施設の負担増大
分別されていないゴミは、処理施設での作業効率を著しく低下させます。これにより、施設の稼働時間が延長され、エネルギー消費量が増加します。結果として、処理コストの上昇を招き、最終的には市民の税負担増加につながる可能性があります。
【ゴミ処理事業経費の推移】
出典:環境省『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和4年度)について』p.20(2024年3月)
2022年の実績では、ゴミ処理事業経費は、日本全体で2兆1,519億円でした。これを国民1人当たりに換算すると、17,100円となります。ゴミ処理にかかる経費はだんだんと増加しており、それに伴い私たち1人当たりにかかる負担も増えています。
リサイクル率の低下
適切に分別されていないゴミは、リサイクルに手間とコストが余計にかかることになります。これにより、企業の利益率が低下し、本来再利用可能な資源が無駄に廃棄される可能性があります。「分ければ資源、混ぜればゴミ」とも言われるように、分別されていないゴミは資源の有効活用の機会を失ってしまいます。
危険物混入リスクが高まる
分別されていないゴミの中に、有害物質や危険物が混入するリスクが高まります。これは、収集作業員や処理施設の従業員の安全を脅かす可能性があります。また、不適切な処理により、環境汚染のリスクも増大します。 実際に、乾電池やリチウムイオンバッテリーなどがルールを守らずに捨てられたことによる発火事故が増加し、問題になっています。
日本のゴミと分別
ゴミの埋め立て地が限られている日本では、このままゴミの量が減らなければ、2050年を前に処分場が満杯になってしまうという危機的な状況です。この切迫した状況に対応するためには、技術革新はもちろんのこと、私たち一人ひとりの意識と行動の変革が不可欠です。
日本のゴミ処理システムは世界的に見ても高度な水準にありますが、さらなる改善の余地もあります。この章では、日本のゴミ事情と分別の現状を確認していきましょう。
日本のゴミ排出量
【ゴミ総排出量の推移】
出典:環境省 『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和4年度)について』p.1(2024年3月)
私たちの日々の生活から生まれるゴミ。その量は、想像以上に膨大なものです。環境省によると、令和4年度の日本全体のゴミ総排出量は4,034万トンにも上ります。これは、東京ドーム約108杯分に相当する量なのです。
一人一人の日常を見てみると、1日当たりのゴミ排出量は880グラム。そのうち、家庭から出るゴミは496グラムとなっています。
実は、ゴミの総排出量は平成25年度以降、減少傾向にあります。環境省が基準としている平成24年度の4,523万トンを、10年連続で下回っているのです。これは、私たちの中に「ゴミ削減」「リサイクル」などの意識が浸透してきている結果と言えるでしょう。
日本のリサイクル率
それでは、どれくらいの割合でゴミが資源としてリサイクルされているのでしょうか?令和3年度のデータによると、その割合は19.6%で、残念ながら微減傾向にあることがわかっています。
リサイクル率(※1)が減っている原因の1つとして、私たちの生活が豊かになるにつれて、ゴミの種類がますます複雑化している問題があります。リサイクルできるものとできないものを正確に分別することが難しくなり、結果としてリサイクル率が低下している可能性があります。
【総資源化量とリサイクル率の推移】
出典:環境省 『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和4年度)について』p.5(2024年3月)
(※1)リサイクル率:リサイクル率は下記の計算式で算出されています。
リサイクル率が低いということは、それだけ多くの割合のゴミが埋め立て処分や焼却処分されることを意味します。埋め立て処分は、土地の有効活用を阻害し、環境汚染の原因となる可能性があります。また、焼却処分は温室効果ガスの排出が増えるだけでなく、大気汚染やダイオキシンなどの有害物質の発生につながる恐れがあります。
日本のゴミの分別はなぜ細かいの?
日本のゴミ分別の細かさは、環境保護と資源の有効活用という2つの大きな目標から生まれています。
まず、日本で細かいゴミの分別が求められるようになった背景には、1960年代から70年代にかけて深刻化した公害問題があります。大気汚染や水質汚濁など、環境破壊の悲惨な結果を目の当たりにした日本社会は、環境保護の重要性を痛感しました。この経験が、ゴミ処理に対する政府、企業、国民の意識を大きく変えたのです。
次に、日本は資源の少ない国であるという現実があります。そのため、ゴミを単なる廃棄物ではなく、貴重な資源として捉え直す必要がありました。細かい分別は、リサイクル率を高め、資源の再利用を促進するための重要な手段なのです。
日本で一番分別ルールが細かい自治体:徳島県上勝町
徳島県勝浦郡上勝町は、日本一細かいゴミ分別で知られる先進的な自治体です。この小さな町が実践する「ゼロ・ウェイスト」の取り組みは、環境保護と資源の有効活用を両立させる素晴らしい例として、世界中から注目を集めています。
出典:徳島県上勝町『ゼロ・ウェイスト政策 ゴミ分別表』p.5(2024年3月)
上勝町では、ゴミを13種45分類という驚くべき細かさで分別しています。住人は、2週間に1度程度、自家用車でゴミを「ゴミステーション」と呼ばれる資源回収拠点に持ち込みます。ここで、家庭でおおまかに分けたゴミをさらに細かく分類します。
この取り組みの素晴らしい点は、単にゴミを減らすだけでなく、資源として活用できるものを最大限に生かしていることです。例えば、紙や金属などのリサイクルで得られる収入は年間250〜300万円にも達するそうです。これは町の財政にとっても大きな助けとなっています。
\分別と「ゴミ問題」について考える/
\分別とゼロウェイストの違いって?/
世界のゴミと分別
世界のゴミ問題は、経済発展と環境保護のバランスを取る上で重要な課題となっています。先進国では3R(リデュース・リユース・リサイクル)の導入や循環型経済の確立に向けた取り組みが進む一方、発展途上国では公衆衛生の確保から環境保全、ゴミ削減まで同時に取り組まなければならない困難な状況にあります。
世界のゴミ排出量
現在、世界では年間約20.1億トンの都市ゴミが排出されています。これは東京ドーム約1,600杯分に相当する膨大な量です。さらに懸念されるのは、この数字が今後も増加し続けるという予測です。世界銀行(※2)の報告書によれば、2050年までにゴミの排出量は年間34億トンにまで増加すると見込まれています。これは現在の排出量から実に70%も増加する計算になります。
地域別に見ると、現在最も多くのゴミを排出しているのは東アジア及び大洋州地域で、世界全体の23%を占めています。また、高所得国は世界人口のわずか16%しか占めていませんが、世界のゴミの約3分の1(34%)を排出しています。
(※2)世界銀行:主に発展途上国の貧困削減や経済発展を目的とした融資や技術支援を提供する国際的な金融機関。国際復興開発銀行(IBRD)と国際開発協会(IDA)を中心とした世界銀行グループと呼ばれる複数の機関で構成されている。
世界のゴミのリサイクル率
世界のゴミのリサイクル率は、国や地域によって大きな差があります。また、リサイクル率の計算方法が国際的にまだ統一されておらず、明確な数値を算出するのが難しい状況なので、参考として確認してください。
OECDの報告によると、2018年時点で加盟国の平均リサイクル率は約24%、(2019年では32%)となっています。先進国ではゴミの分別やリサイクルへの取り組みは進んでいますが、途上国の多くの地域では、ゴミの殆どが回収されず、野外に捨てられる状況です。
日本のリサイクル率は2018年時点で約19%と、OECD平均を下回っています。国内基準ではリサイクル率が約80%となっていますが、これは日本の場合は熱回収(焼却時のエネルギー利用)が約60%を占めるためです。資源の有効活用という観点では有効ですが、熱回収は世界基準ではリサイクルとして認められていないのが現状です。
【一般廃棄物の処理状況(OECD、2018年)】
出典:経済産業省『成長志向型の資源自律経済戦略』p.37(2023年3月)
\熱回収(サーマルリサイクル)について考える/
世界のゴミの分別事情
世界各国のゴミ分別事情は実に多様です。ゴミの分別は国によって大きく異なり、それぞれの国で独自のルールや回収方法があります。
ここでは、特徴的な取り組みを行っている国を紹介します。
ドイツ
ドイツのゴミ分別システムは、環境保護と資源の有効活用を重視した独自の方式で運営されています。日本とは異なる点も多く、例えば「デポジット制度」が導入されています。デポジット対象の商品は、購入時に容器代が含まれ、返却時にその金額が返金される仕組みです。
ドイツのゴミ分別方法
普通ゴミ・その他ゴミ [Restmüll] |
一般家庭から出るゴミで、燃えるゴミと燃えないゴミの区別はありません。オムツや生理用品も含まれます。 |
生ゴミ [Biomüll] |
食品の残りや庭から出る落ち葉など、自然に戻るゴミです。自治体によっては普通ゴミと一緒に扱うこともあります。 |
資源ゴミ・リサイクルゴミ [Wertstoffe] |
プラスチックやアルミ、牛乳パックなど、リサイクル対象の包装材が含まれます。リサイクルマークがあるものが該当します。 |
紙 [Papier] |
雑誌や新聞、段ボールなどが対象です。ただし、汚れたものは普通ゴミとして処理します。 |
デポジット対象外の瓶 [Glas] |
ジュースやワインの空き瓶が含まれ、色別に回収されます。 |
デポジット対象の瓶・缶・ペットボトル [Pfandflaschen] |
リサイクルやリユースの対象となり、回収時に返金される仕組みです。 |
衣類 [Kleider] |
不要になった衣服や布製品を対象とします。 |
電化製品 [Elektromüll] |
基本的に市の集配場に持ち込む必要があります。 |
粗大ゴミ [Sperrmüll] |
家具などの大型ゴミで、事前に回収予約が必要です。 |
ドイツでは、ゴミの捨て方が比較的自由で、特定の曜日に出さなければならないというルールはありません。各アパートには常にゴミ回収のボックスがあり、好きな時に捨てられます。ただし、分別を守らないとゴミ収集業者が回収しない場合もあるため、注意が必要です。
スウェーデン
スウェーデンでは、家庭から出るゴミの99%が何らかの形でリサイクルまたはエネルギー源として利用されています。この高いリサイクル率は、国全体での環境意識の高さを反映しています。スウェーデン政府は、2025年までに食品廃棄物を20%削減する目標を掲げており、リサイクルを超えた循環経済の実現を目指しています。
スウェーデンのゴミの分別方法
生ゴミ [Matavfall] |
コンポストで堆肥にしたり、バイオガスを生成するために利用されます。 |
紙類 [Papper] |
雑誌、段ボールなどは、細かく分別され、再生紙の原料として利用されます。 |
プラスチック [Plast] |
種類別に分別され、リサイクルされます。 |
ガラス [Glas] |
色によって分別され、リサイクルされます。 |
金属 [Metall] |
スチール缶やアルミ缶などは、それぞれ別のルートでリサイクルされます。 |
有害ゴミ [Farligt avfall] |
電池、塗料など、有害な物質を含むゴミは、専用の施設で処理されます。 |
スウェーデンでも、アルミ缶やペットボトルにはデポジットが設定されており、スーパーに持ち込むとお金が返ってきます。また、スウェーデンのエコシティ「Hammarby Sjöstad(ハンマルビー・ショースタッド)」では、燃えるゴミを利用して暖房用のお湯を沸かし、発電にも利用したり、下水処理後の汚泥を発酵させてバイオガスを生成し、アパートのガスレンジや市バスの燃料に活用したりと、先進的な取り組みが行われています。
\遊びながら世界の分別を学ぼう!/
分別されたゴミの行方
日本には、ゴミの分別やリサイクルに関わる複数の法律があります。ゴミは分別された後、それぞれの法律に従って処分されたり、再利用されたりします。
【日本の廃棄物の最終処分量、循環利用率、再生利用率の推移】
出典:経済産業省『経済産業省の循環経済政策について』p.6(2022年11月)
近年、日本では廃棄物処理に関する法制度が整備され、その結果として最終処分量が減少し、再生利用率や循環利用率が向上しています。1999年と2017年を比較すると、一般廃棄物の最終処分場の残余年数(※3)は8.5年から21.8年に、産業廃棄物は3年から17年に改善されました。
(※3)一般廃棄物の最終処分場の残余年数:現在の処分場(最終処分としての埋め立て地)が、このままの状況で行くと、あとどれくらいの期間、廃棄物を受け入れることができるかを示す指標。
それではゴミの種類別に、分別されたあとの行方を見ていきましょう。
リサイクルできるゴミ
私たちの生活から出たゴミは、適切な分別とリサイクルを通じて、可能なものは新たな資源として生まれ変わり、私たちの暮らしを支え続けています。
缶(スチール缶、アルミ缶、他)
缶は、材質によって異なるリサイクル過程を辿ります。スチール缶は磁石で分別され、製鉄所で溶かされて新しい鉄製品に生まれ変わります。一方、アルミ缶は溶解され、再びアルミ缶や自動車部品などに姿を変えます。リサイクルする際は、中身を空にし、軽く水ですすいでから出すことが大切です。
ビン
ビンは色別に分別され、粉砕されてカレット(ガラスの破片)になります。このカレットは新しいビンの原料として使用されるほか、道路舗装材やタイルなどの建築資材としても活用されます。ラベルやキャップは必ず取り外し、別途リサイクルに出すようにしましょう。
ペットボトル
ペットボトルは、洗浄・粉砕・溶解の工程を経て、新たなペットボトルや繊維製品、文房具などに生まれ変わります。ペットボトルの分別時には、キャップやラベルを外し、しっかりと洗浄することが重要です。
プラスチック
プラスチックは、私たちの生活に欠かせない素材ですが、種類が非常に多く、リサイクルの仕方も様々です。プラスチックのリサイクルには主に3つの方法があります。
- マテリアルリサイクル:プラスチックを粉砕・洗浄し、新しい製品の原料として再利用します。
- ケミカルリサイクル:プラスチックを化学的に分解して原料に戻します。
- サーマルリサイクル:プラスチックを燃料として熱エネルギーを回収します。
例えば、お弁当やお惣菜に使われる食品トレーは、プラスチックの一種です。多くの場合は、洗浄後に粉砕・溶解され、再び食品トレーや文具、衣類などの原料として使用されます。食品トレーを廃棄する際は、きれいに洗って乾かしてから出すようにしましょう。
\「プラスチック資源循環法」が1分でわかる!/
古紙・雑がみ
新聞、雑誌、段ボールなどの古紙は、種類ごとに分別され、パルプ化されて新しい紙製品に生まれ変わります。雑がみ(メモ用紙、封筒、紙袋など)も貴重な資源です。ただし、感熱紙やカーボン紙、防水加工された紙などは、リサイクルできないので注意が必要です。
紙の種類によって、それぞれ以下のようなものに生まれ変わります。
- 段ボール: 新しい段ボール箱、卵パック、緩衝材など
- 新聞:新聞紙、コピー用紙、雑誌、絵本、段ボール箱など
- 雑誌:段ボール箱、封筒、ボール箱、絵本、新聞紙、週刊誌、印刷用紙など
- 雑紙:ティッシュペーパー、トイレットペーパー、紙コップ、紙皿など
\詳しく知りたい紙のリサイクル/
リサイクルできないゴミ
私たちの日常生活から出るゴミの中には、リサイクルできないものも少なくありません。リサイクルできないゴミは、大きく分けて「不燃ゴミ」と「可燃ゴミ」に分けられます。
不燃ゴミ
不燃ゴミは、焼却や分解が難しい素材でできたゴミを指します。不燃ゴミの多くは、最終的に埋め立て処分されます。埋め立て地は、ゴミを土で覆い、最終的には公園や緑地として利用されることもあります。
また、一部の不燃ゴミは、細かく砕いて道路の材料などに再利用されることもあります。不燃ゴミの処理には多くの労力とコストがかかるため、できるだけゴミの量を減らすことが大切です。
【代表的な不燃ゴミ】
- 陶磁器類
- 複合素材の製品
- 鏡やガラス製品
- 電球・蛍光灯
- 使い捨てライター
- 汚れの落ちない金属製品
- 一部の分解・分別が困難な小型家電
可燃ゴミ
可燃ゴミは、焼却可能な素材でできているゴミです。主に、紙くず、食品廃棄物、プラスチック製品などが含まれます。これらは焼却処理され、エネルギーとして再利用されることもあります。
また、可燃ゴミの中には、バイオマスとして注目されている資源が多く含まれています。バイオマスとは、動植物から生まれた再生可能な有機性資源のことを指します。
【バイオマス利用が可能な可燃ゴミの例】
- 生ゴミ:果物や野菜の皮、茶殻など、キッチンから出る生ゴミは、メタンガスを作り出す原料として利用できます。メタンガスは、発電や燃料として利用することができます。
- 食品廃棄物:スーパーマーケットや飲食店から出る食品廃棄物も、バイオマスとして利用できます。
- 紙ゴミ:新聞紙や段ボールなどは、バイオマス発電の燃料として利用できます。
- 木質バイオマス:木材チップや剪定枝などは、バイオマスボイラーの燃料として利用できます。
家庭でゴミを分別するポイント
私たちの生活の中で、ゴミの分別は環境を守る大切なステップです。日々の暮らしの中で、ちょっとした工夫を加えることで、ゴミの分別はより簡単に、そして効果的に行えるようになります。
分別しやすい製品を選ぶ
環境に配慮した製品選びは、ゴミ分別の負担を軽減する賢明な方法です。例えば、単一素材で作られた商品や、分解しやすいデザインの製品を選ぶことで、分別作業がぐっと楽になります。
例えばパッケージが少ない商品を選ぶ、長く使えるものを選ぶ、リサイクルマークがあるものや、詰め替えができるものを選ぶなどの方法があります。
リサイクルマークを確認する
製品に表示されているゴミの分別に関するマークは「リサイクルマーク」と呼ばれています。このマークは、製品がリサイクル可能であることを示しており、具体的にはプラスチック製品や紙製品などに見られます。リサイクルマークには、リサイクルの種類や素材に応じた異なるシンボルがあり、消費者が適切に分別するための指標となります。
リサイクルマークの他にも、製品によっては「分別マーク」や「廃棄物処理マーク」などが表示されていることもあります。
自治体の分別方法を確認する
ゴミの分別方法は、自治体によって異なります。ゴミ収集日や、出す場所、分別方法などを、住んでいる場所の自治体ホームページやゴミ収集カレンダーで必ず確認しましょう。
分別の種類ごとのゴミ箱を用意する
効率的な分別には、適切なゴミ箱の配置が欠かせません。種類別のゴミ箱を用意することで、日常的な分別作業がスムーズになります。各ゴミ箱にラベルを貼るなどの工夫で、家族全員が簡単に分別できるようになります。また、スタッキング式のゴミ箱などを活用すれば、省スペースで数種類の分別が可能になります。
地域の資源ゴミ回収ボックスを利用する
多くの地域では、スーパーマーケットや公共施設に資源ゴミ回収ボックスが設置されています。これらを積極的に利用することで、家庭でのゴミの蓄積を減らせます。近くの回収場所を調べて、定期的に訪れる習慣をつけてみましょう。地域の仲間と協力して、資源を大切にする意識を広めていくことができます。
リサイクルショップやフリマアプリを活用する
まだ使える物は、ゴミとして捨てるのではなく、リサイクルショップやフリマアプリを通じて新しい持ち主に譲ることができます。これは、ゴミの削減だけでなく、資源の有効活用にもつながる素晴らしい方法です。
例えば、季節外の衣類や使わなくなった家電をリサイクルショップに持ち込む、フリマアプリで不要になった本や雑貨を出品する、地域のフリーマーケットで販売するなど、不用品を有効活用する方法はさまざまです。
まとめ
私たちの生活から出たゴミは、適切な分別とリサイクルを通じて、新たな資源として生まれ変わり、地球環境の保全に貢献することができます。世界で深刻化するゴミ問題を考えることは、私たち一人ひとりの暮らし方を見直すことでもあります。 また、ゴミを減らし、リサイクルを心がけることは、SDGs(持続可能な開発目標)の目標達成にもつながります。
- SDGs目標12:つくる責任 つかう責任
- SDGs目標13:気候変動に具体的な対策を
- SDGs目標14:海の豊かさを守ろう
- SDGs目標15:陸の豊かさも守ろう
例えば、ゴミを減らすことで、資源の無駄遣いを防ぎ、地球環境への負荷を軽減することができます。また、リサイクルすることで、ゴミが埋め立てられる量を減らし、地球温暖化の原因となるメタンガスの発生を抑えることができます。さらに、海洋プラスチックゴミの問題も、ゴミの分別とリサイクルを徹底することで解決に近づけるのです。
私たちが目指すのは、ゴミを捨てるのではなく、可能な限り資源として循環させる「サーキュラーエコノミー」を実現することです。ゴミを減らし、リサイクルすることで、限りある資源を大切に使い、未来の世代へと引き継いでいくことができます。
今日から、ゴミを捨てる時に一瞬立ち止まり、「このゴミはリサイクルできないだろうか」と考えてみてください。そして、「分別して当たり前」の習慣を身につけましょう!
参考・引用文献
【ゴミの未分別による環境への影響】
環境省『一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和3年度)について』(2023年3月)
環境省『一般廃棄物の排出及び処理状況等(令和4年度)について』(2024年3月)
国立行政法人 資源循環・廃棄物研究センター『なぜ日本のごみのリサイクル率はヨーロッパに比べて低いのか?』(2020年8月)
環境省『3R学び合いブック(大人向け)』よくある質問(2023年7月)
環境省『廃棄物分野における地球温暖化対策について』(2021年4月)
環境省『令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』 第2部第3章第4節 ライフサイクル全体での徹底的な資源循環
環境省『脱炭素に向けた資源循環をとりまく状況』p.11(2023年7月)
日本財団『2050年の海は魚よりもごみが多くなる?今すぐできる2つのアクション』(2022年8月)
政府広報オンライン『海のプラスチックごみを減らし きれいな海と生き物を守る!~「プラスチック・スマート」キャンペーン~』(2019年5月)
日経Biz Gate『プラごみは地上資源 循環経済の確立急げ(2)』(2022年10月)
JAMSTEC BASE『深海にもプラスチックの溜まり場が! 海のプラスチック汚染を可視化する——深海底や中層に溜まる永遠に消えないごみ』(2024年2月)
第18回廃棄物学会研究発表会 岩手県立大学 篠木幹子『ごみ分別制度の特徴とコスト感がごみ分別行動に与える影響の分析』
「廃棄物資源循環学会論文誌」28巻 篠木幹子『ごみの分別行動と減量行動に影響を与える要因の検討―― 仙台市民の 10 年間の変化 ―』(2017年)
九州大学大学院 工藤 亜美『分別協力度を考慮した事業系生ごみ資源化の環境評価 : 不良生ごみの覆土助材利用シナリオの検討』(2015年2月)
東京大学『Q.21 分別したプラスチックはホントに役立っているの?』(2023年8月)
「水質汚濁研究」13巻3号 花嶋正孝『廃棄物埋立場における有害物質の挙動』(1990年)
環境省『土壌汚染対策法の仕組み』(2004年4月)
【ゴミを分別するメリット】
環境省『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和4年度)について』(2024年3月)
環境省「プラスチック資源循環」『市区町村によるプラスチックの分別収集・リサイクル』
一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター『どうして分別しないといけないの?』
一般社団法人産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター『「ごみ」ってなに』
「環境経済・政策研究」4巻1号 碓井健寛『自治体はなぜリサイクルを行うのか?』(2011年)
環境省「デコ活」『「ごみを減らせ!」「ごみは資源!」そんな意識がつくる脱炭素な日常』(2021年3月)
日本経済新聞『リチウムイオン電池発火、ごみ処理場が悲鳴 進まぬ分別』(2024年9月)
【日本のゴミと分別】
環境省『日本の廃棄物処理の歴史と現状』(2014年)
環境省「ecojin」『3R徹底宣言!』(2022年11月)
日本経済新聞『行き場失うごみ 20年後に処分限界 埋め立て減、焼却灰再生やAI分別で』(2024年9月)
東洋経済ONLINE『ごみを分別しない人に教えたい焼却停止の大損失 23区のごみ埋め立て可能年数を知っていますか』(2022年4月)
香川大学「経済政策研究」 第2号 筒井 敬治『日本におけるごみ問題とその対策』(2006年3月)
国民生活センター「国民生活」No.142『プラスチック新法と消費生活』(2024年6月)
一般社団法人 プラスチック循環利用協会『プラスチック製品の生産・廃棄・再資源化・処理処分の状況』(2023年12月)
環境省『一般廃棄物処理事業実態調査の結果(令和4年度)について』p.1、p.5(2024年3月)
一般社団法人 産業環境管理協会『リサイクルデータブック2023』(2023年7月)
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徳島新聞『ごみの45分別は正解か?【Rethink 上勝町のゼロ・ウェイスト/東輝実】vol.2』(2022年2月)
【世界のゴミと分別】
WORLD BANK GROUP『What a Waste: 固形廃棄物管理の未来に関する最新の分析』(2018年9月)
OECD『Environment at a Glance 2020』p.48(2020年)
経済産業省『成長志向型の資源自律経済戦略』p.37(2023年3月)
独立行政法人 国際協力機構『世界のごみの現状を知る』p.37(2018年5月)
一般社団法人 産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター『世界のごみ、リサイクル』
ドイツ大使館『Vol.8 ゴミ袋は、ゴミを利用すればいいじゃない。』(2021年8月)
ドイツ大使館『「ゴミ」にまつわる意識 ドイツと日本の違い』(2023年2月)
フランクフルトラインマイン国際投資促進公社『ドイツ生活上のルール ~ごみの出し方~』(2024年5月)
一般社団法人 産業環境管理協会 資源・リサイクル促進センター『ドイツのごみのゆくえ』
日経BP「未来コトハジメ」『ゼロ・ウェイスト先駆者シェフが語るごみも「名前」を付ければ「プロダクト」になる』(2020年3月)
国民生活産業・消費者団体連合会『北欧(スウェーデン、フィンランド)視察レポート』(2018年)
講談社「FRAU」『日本より簡単なのに…スウェーデンの「すごすぎるゴミ出し」で分かったこと』(2023年9月)
経済産業省『成長志向型の資源自律経済戦略』(2023年3月)
【分別されたゴミの行方】
環境省『脱炭素に向けた資源循環をとりまく状況』p.40(2023年7月)
環境省『環境基本法の概要』
環境省『環境基本計画』
経済産業省『循環型社会形成推進基本法(基本的枠組み法)』(2001年1月)
環境省『循環型社会形成推進基本法』(2000年6月)
経済産業省『資源有効利用促進法』
環境省『プラスチック資源循環』
経済産業省『プラスチック資源循環促進法に基づく事業者の再資源化に係る初めての認定を行いました』(2023年4月)
環境省『グリーン購入法』(2017年2月)
経済産業省『経済産業省の循環経済政策について』p.6(2022年10月)
アルミ缶リサイクル協会『リサイクルについて』
スチール缶リサイクル協会『リサイクル率』
全国18リットル缶工業組合連合会『回収・リサイクル』
財団法人クリーン・ジャパン・センター『早わかり資源有効利用促進法』
日本容器包装リサイクル協会『容器包装ごみが生まれ変わるまで ガラスびん』
PETボトルリサイクル推進協議会『PETボトル再商品化の流れ』
環境省 ecojin『プラスチックとどうつきあう?』(2022年4月)
東洋経済ONLINE『分別でも「プラごみ」の多くは焼却されている現実「プラマーク」意外にも注意して見たい"表示"』(2023年6月)
環境省『プラスチック使用製品廃棄物の分別収集の手引き』(2022年1月)
農林水産省『容器包装リサイクルの手引き』
環境省『食品容器包装の3Rの促進に向けて』(2006年1月)
古紙再生促進センター『紙リサイクルの基礎知識』
【家庭でゴミを分別するポイント】
環境省 ecojin『ごみ出しのコツをつかんで楽しく分別しよう!』(2024年2月)
環境省「環境ラベル等データベース」『リユース・リサイクルのための表示』
環境省「環境ラベル等データベース」『ごみの減量化・再生利用対策の推進について』(1992年)
【まとめ】
消費者庁『令和2年版消費者白書』第1部 第2章 【特集】つくる責任、つかう責任、減らす責任~食品ロス削減--持続可能な社会のために~(2020年)
環境省『令和6年版 環境・循環型社会・生物多様性白書』第1部第2章第4節 循環経済(サーキュラーエコノミー)(2024年6月)