鴨志田農園|堆肥づくりが地域の悩みを宝に変える|kamoshida farm

堆肥づくりと循環

鴨志田農園では自家製の完熟堆肥を使うそうですが、どのような特徴があるのでしょうか?

堆肥の定義としては、「主に有機物を微生物の働きによって高温で発酵・分解・熟成させた肥料」になります。その中で、未熟な有機物が含まれておらず、しっかり発酵させてあるものが完熟堆肥です。

完熟堆肥は、高温で病原菌や雑草の種子を確実に死滅させることが大事になります。堆肥が使われる理由は育苗技術の安定化がメインなのですが、赤ちゃんの食べ物に腐っているようなものは使わないですよね。病原菌や雑草の種子が赤ちゃんの段階で与えられてしまうと、すぐに負けてしまいます。培養土という限られた容器で使う土を作るために、堆肥づくりというのは必ず必要なんです。

実は、一般的に完熟堆肥と言って流通しているものの多くが未熟堆肥で、有機で使うことが難しいものが多く、苗を作る技術の安定化のためには、自身で堆肥づくりをやっていくことが必要かなと思っています。

家庭用のコンポストでは臭いが気になることがありますが、鴨志田農園で作る堆肥の臭いはどうですか?

臭いは、基材の種類や、日照量などの外的要因が関わってきます。うちは2ステップ方式をとっていて、各家庭のコンポストケースで生ごみを一次処理してもらって、生ごみを腐らせずに減量していきます。それが終わった後に二次処理をして堆肥化を行います。

堆肥化設備

家庭のコンポストは一次処理で終わっていますが、本来は二次処理で60度以上の高温発酵を行っていくことが大切です。途中で腐っていたら臭いやハエが出てきてしまうのですが、ちゃんと管理していればハエもこないですし、切り返しと言って水分と空気を調節するタイミングの時以外は基本的に臭いは出ないですね。

家庭からの生ごみの回収と野菜づくりの循環を生み出すにあたって、クリアしなければならなかった課題は?

材料のペアリングや、どうやって各家庭の一次処理を管理していくかが結構大変でした。

初年度、38世帯の会員の方に使ってもらっている75リットルのコンポストケースは、1日500gくらい処理できて、3〜4ヶ月でいっぱいになります。そうすると、38世帯分の基材を用意する必要があり、それを都市の中でどうやって用意するかというのが課題にあります。

各家庭に設置しているコンポストケース

それに加えて、今は3年目に入ったのでベテランの方々は上手くやってくれるのですが、初めての人は生ごみの水切りが甘かったり、ハエが発生してしまったりすることがあったので、その技術管理の定着を促すのにはとても時間がかかりました。

また、コミュニティとして38世帯くらいの人が集まるので、その辺りの運営も大変です。一般的な海外のCSAだと、一人専任のCSAの連絡係がいるんですよね。日本の売上規模だとなかなかその人件費を賄うまでは難しいと思います。鴨志田農園は2023年の中旬から3人体制になります。それまでは一人でやっていたのですが、私が4月から大学院に進学して、研究を中心にやりたいので、実家の方は残りの2人にお願いしようかなと思っています。


CSA(Community Supported Agriculture|地域支援型農業)の解説はこちら

大学院に進学されるんですね!ちなみに研究の内容は、堆肥づくりに関することなのでしょうか?

堆肥づくりもありますが、どちらかというと「流域」が主になります。森川里海で連なっている流域に対して、堆肥づくりをすることによってどれだけ環境負荷を減らすことができるのか、数字をとってみたいんです。外部委託でお願いすることもできますが、自分でやったからこそ説明できる言葉と、データをもらってきて説明する言葉は、全く重みが違うんですよね。だから一度自分でやってみて説明できるようになりたいなと思っています。

将来的に、堆肥づくりによって地域に良い循環が生まれるということを、定量的に見ていきたいということですね。

やっぱりコンポストって環境に良いですが、後ろ盾のデータがあまりないんです。確かに生ごみを燃やすのに1トンあたり760リットル必要な助燃剤が減らせているということは良いのですが、それが堆肥になって畑に撒いた時に養分の流亡する分や、農作物としてちゃんと回収できるのか。果たしてコンポストをやった時に本当に良いのかどうかだったりとか、単純に農園としては循環の仕組みができているけれど、それが自分の所属する流域に対してはどうなのかっていうことはデータがとれていません。

例えば、馬術部で使っている馬糞を処理する方法が海外の建材だった場合、輸送コストがかかります。そうではなく、自分たちの所属流域の多摩産の建材を使うことによって、適切な水源管理をすることができます。全部が数珠繋がりになっているので、自分がそれぞれに対して全部関わっていくというよりは、全体の流れとして見せていけるようになりたいと思っています。

最終的にはより一般化して全国に広めていきたいという想いがあるのでしょうか?

うちの農園は面積が小さいので、全部解決するっていうことはできないんですよね。教育畑出身ということもありますし、あくまでも教育と実証実験の場であると割り切っています。全国にうちの農園の教育を経た43名の卒業生がいるのですが、その人たちと連動して、いろんな地域で無数の小さなモデルを生み出しています。

鴨志田農園を中心に全国の卒業生と連動

もちろん大きなモデルを作ることもしていますが、大きなモデルを動かしていこうとすると、協議会を立ち上げて5年くらいかかることが多いですし、多数決の世界になります。少人数の方が絵に描いた餅を確実に餅にできると思うので、ちゃんと形になるものをいろんなところで生み出しているという形です。




【次ページ】堆肥づくりが解決する環境問題とは

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