カンキョーダイナリー

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キャンプコーディネーター こいしゆうか | "便利"を手放して見える世界

キャンプコーディネーター こいしゆうか | "便利"を手放して見える世界

コロナ禍に人混みを避けて遊べるとして火がついた“キャンプブーム”。男女問わず人気を集めているキャンプですが、アニメの影響もあり特に注目なのが、女性だけでキャンプを楽しむ「女子キャンプ」。

 

その女子キャンプの第一人者である、キャンプコーディネーター兼イラストレーターのこいしゆうかさんにカンキョーダイナリーがインタビュー。キャンプコーディネーターとして考える自然と触れ合うことの大切さや自然環境との向き合い方を伺いました。

「私にもできる」を伝えるキャンプコーディネーター

自己紹介をお願いします。

キャンプコーディネーター兼イラストレーターとして活動している、こいしゆうかです。キャンプやスパイスカレーといった趣味の話をエッセイマンガにしています。

キャンプブーム前から「女子キャンプ」と提唱して、女性が自立したキャンプをできるように応援する活動をしています。メーカーとコラボして作った「PANDA」というテントは、女性がひとりでもバックパック1つでキャンプに行けるように、軽量で設営しやすいことをコンセプトにしています。他にもイベントを開催したり、ラジオ、テレビ、雑誌に出演し、キャンプのおもしろさを発信しています。

キャンプを始めたきっかけはなんですか?

キャンプを始めた当時の写真

 

以前は、会社員を5年ほどやっていました。営業事務だったので、なかなか会社から出ることもなく季節感を感じる遊びがしたいと思っていました。そんなときに会社の同僚がキャンプに誘ってくれたのが、キャンプにハマるきっかけでした。その当時、バーベキューはやったことがあったんですが、キャンプは初めてだったんです。

それまでキャンプは子供のものと思っていたのですが、行ってみると老夫婦がのんびりしていたりと静かな大人向けのキャンプがあるんだということをその時に初めて知りました。夜は静かな環境の中で焚き火で温まったり、星空をただボーっとみる。そこまでアクティブじゃない、文化的なアウトドアというところに魅了されました。

こいしさんのキャンプスタイルを教えてください。

徒歩キャンプグッズの数々

 

引っ越しのように大きな道具を運ぶキャンプではなく、車がなくてもバックパック1つでキャンプができる「徒歩キャンプスタイル」を提案しています。

今は関東近辺だと、電車でアクセス可能なキャンプ場が増えてきています。道具も進化していて、1kg以下の椅子などもあるので、女性でもバッグパック1つでキャンプにいけるんです。特に、都内に住む女性は車を運転する機会も少なく、ペーパードライバーの方が多いですよね。なので、車が運転できない方でもキャンプができることを伝えていきたいんです。

実際にこいしさんは年間どのくらいキャンプをしているんですか?

トカラ列島でキャンプをした時の様子

 

長期で休めるときは長期の旅キャンプをしています。一泊二日などの短期のキャンプは、友人と季節ごとに行くようにしています。電車でアクセスしやすいところにも行きますし、船で島まで移動する島キャンプもやります。東京からであれば、有明から船でいける伊豆諸島での島キャンプはおすすめです。(※新島地区のみ期間限定・完全予約制にて解放中)

自然が深いキャンプ場に出向くのも好きで、日本最古の秘境と言われるトカラ列島の悪石島にも行きました。鹿児島から船で10時間くらいかけてやっと着くんですけど、商店が1つもなく、ヤギにしか会わないんです(笑)

キャンプへのこだわり

おすすめのキャンプ道具を教えてください。

まず1つ目は「森の着火剤」です。

森の着火剤


よくあるチューブ状の着火剤は匂いがきついのですが、これは木屑でできているので着火するときに匂いがしないんです。

2つ目は「岩手切炭」。

岩手木炭


国産の間伐材を使用した切炭です。環境にも優しく、お肉も美味しく焼き上がります。ホームセンターでお得に買えるマングローブの炭は、マングローブの木を伐採したうえで船での長距離輸送をおこなっています。なので、環境にはよくないですよね。

『岩手木炭』ができるまで


最後に、これはアイテム全体に言えることなんですが、10〜20年先を見据えた良質なキャンプ道具を選ぶのがおすすめです。

こいしさんが長く愛用しているグッズ


日本メーカーが作っているものはとても耐久性が高くていいですよね。例えば、キャンプ用品の聖地と言われる新潟県の燕三条のアイテムは一生モノ。もちろん、その分安くはないですが、目の前の値段で決めずに10〜20年先を見据えて選んで欲しいです。のちのち長く使えて、エコにも繋がりますしね。

 

キャンプ場でのこだわりはありますか?

実際のキャンプ飯

 

1番のこだわりは「翌日の朝の食材は買わない」です。私の場合、夜ご飯が残ることが多いのでそれを食べたり、残らなかった場合にはフリーズドライや缶詰といった長期保存ができるものを1〜2個持っていくようにしているので、それを食べています。

意外と非日常を楽しむために食材を買いすぎてしまう方が多いんですよね。でも、それは本当にもったいないです!事前に何を食べるか決めたうえで、買い出しをしてみてください。もし「足りないかも…」という不安から多く買ってしまうのであれば、フリーズドライや缶詰を持っていくなどの工夫をしてみてください。ひと工夫で食品ロスを無くしていけると思います。

 

\食品ロスってなに?/

すごくわかります…たまにしか行かない人にとっては一大イベントなので、パーティかのように買ってしまいますよね。

1週間分くらいの食料を買っていたりしますよね(笑)それも何回もキャンプに行く中でわかって来ると思います。食べ物だけでなく、自分が1日にどのくらい水を使うかもわかってくるようになります。そういう意味では、キャンプを通して生きていくために必要な資源の量を知ることで、食品や水を大切にできます。防災に近い感覚ですね。

とても環境に配慮したキャンプをしているんですね。

こいしさんがコロナ禍に作ったコミュニティ「エポックアウトドア」

 

そうですね。自然の中で遊ばせてもらっているという意識があるので、自らの手で自然環境を持続させていくことを意識しています。コロナ禍にはオンライン上でコミュニティを作って、環境に配慮したギア開発を行いました。あと、アウトドアライフストアのWILD-1(ワイルドワン) とコラボをしてTシャツ作りもしています。

アウトドア業界は自然の中で活動をさせてもらっているので、自然のことや環境問題に対して他の企業よりも早くアクションを起こす必要があります。ただ、日本は後進国でとても遅れをとっているのが現状です。REIというアメリカのとても有名なアウトドアショップでは、メンバーシップになると自動的にアウトドア保護のチャリティができるという取り組みもされているんです。

自然と向き合うキャンプ

こいしさんが考えるエコキャンプについて教えてください

自然の中にいるこいしさん

 

水を節約したり、お皿の汚れを拭いてから洗ったり、食べ残しをしないようにしたり…言葉の通り、自然に優しいキャンプをすることが「エコキャンプ」と言われますが、私はキャンプという行為自体がエコだなと感じます。そうでないと自然を直接破壊することになりますしね。

キャンプは便利な現代生活のなかで昔の暮らしに戻るという貴重な体験ができるものです。この体験をすることでいかに自然の中で生かされているかということに気付かされるんです。キャンプという遊びの中で自然を思い出し、キャンプという遊びの中で自然の尊さが培われると考えています。そうすることで、より一層、自然と環境問題に関心を持ち、普段から地球に優しい生活をしたくなりますよね。

 

\詳しく学ぼう/

これから「自然環境を意識したキャンプ」をしたいと考えている方へ、アドバイスはありますか?

「エコなキャンプをする!」よりも「エコを意識するためにキャンプという遊びをする!」という考えの方が無理がなくていいと思います。そのうえで、まず意識して欲しいのは道具選びですね。私は「ものを選ぶ時からキャンプは始まっている」と思っているくらい道具選びは大事なポイントだと思います。先ほどもお伝えしたように、良質で長く使えるものを大切に使って欲しいです。

あとは、少し勇気を出して自然が深いところでキャンプをしてみてください。きっと意識改革につながると思います。パーティ感覚のエコとはいえないキャンプが生まれる理由として、施設が至れり尽くせりだからというのがあると思います。便利なキャンプ場も楽しくていいのですが、自然への意識はまだ遠いです。ぜひ不安になるくらい自然に近い場所で、普段では味わえない自然を感じながら、ステップアップしたキャンプをしてみてください。

今後の展望を教えてください。

 

今まではキャンプの魅力やハウツーなどをみなさまにお伝えしてきましたが、今後はキャンプを通じて見える世界や自然との距離感のお話しなどをしていけたらなと思います。例えば双眼鏡を手に取り、鳥たちを見たり、虫眼鏡でじっくり木を見てみたり、古くも新たなキャンプの遊びをお伝えしつつ、自然と人間のありかたを考えるきっかけになればと思っています。

具体的には、キャンプ場で自然の見え方を遊びながらお伝えする小さなキャンプイベントなんかも考えています。

読者の方へのメッセージ

キャンプは自然学習に最適

 

季節感多様性を学べるキャンプは、自然と触れ合う自然学習の中でもとてもいい体験だと思います。都内の公園では鳥や虫の種類も限られてきますが、少し足を運べば普段出会えない鳥や虫、変わった形の葉っぱ、風の強さ、寒さ、暑さを目一杯実感できます。

1泊2日でも、2泊3日でも、自然の中で過ごすというのは子供の価値観にも大きく影響する何にも変え難い経験なのです。親子の絆にも繋がりますし、ぜひ親子でキャンプを始めて成長してもらいたいです。その際には、春、初夏、秋、秋の終わりと四季を感じるために年に4回キャンプをすることをおすすめします。木々の移り変わり、朝靄、寒さ、土の結露、蝉の幼虫。季節感と多様性を学ぶのにはキャンプが最適だと思っています。

 


編集後記

こいしさんにはカミングアウトできなかったが、実はキャンプ未経験のスタッフ。(もう1名のスタッフは経験者)周りにキャンプ好きな友人が多く「いつか人生経験としてキャンプをしてみたい」という思いはありつつも「わからない」「めんどくさそう」が勝ってしまい、温泉やリゾートホテルを選びがちでした。

私のように、キャンプに興味はあるけど、きっかけがなくアクションできていない方に少しでも心踊る内容になれば良いなと思いながら書きました。私もキャンプ好きの友人に連絡をして、連れて行ってもらえないか交渉するところから始めようと思います。

 


 

こいしゆうかさん直筆サイン入り『ゆるっと始めるキャンプ読本』プレゼントキャンペーン実施中

※本キャンペーンは2023年5月8日12:00をもちまして応募を締め切りました。ご参加ありがとうございました。

 

こいしゆうか

Profile

こいしゆうか

イラストレーター・エッセイ漫画家・キャンプコーディネイター

主な書籍に「そうだ、キャンプいこう!」(standards)「カメラはじめます!」(サンクチュアリ出版)「ゆるっと始める!キャンプ読本」(kadokawa)などがある。難しいことをわかりやすく親しみのある漫画で表現。「ランドネ」(エイ出版)、「ガルビー」(実業之日本社) 、「くらべてけみして」(新潮社)にて連載中。他、キャンプコーディネイターとしては、2009年から女性が自立してキャンプをする「女子キャンプ」を提唱。女性目線のキャンプスタイルの提案、オリジナルテント「PANDA」のデザインなどを手がける。ラジオ、テレビ、雑誌など他メディア出演多数。

出演履歴:TV:マツコの知らない世界(2016)、ヒルナンデス(2019)、あさイチ(2019) ラジオ:「高橋みなみのこれから、何する?」(2017)「あさナビ」(2018)

 

http://koishiyuka.com/

キャンプコーディネーター こいしゆうか | "便利"を手放して見える世界

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